rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

8月20日 党中央委員会第7期第6回全員会議開催、第8回党大会の開催を決定

 

 かねて予告されていたとおり、標記会議が8月19日に開催されたことが報じられた。同会議では、第8回党大会を来年1月に開催することを決定したという。これは正直言ってまったくの想定外であった。

 全員会議は、相変わらず金正恩の独壇場であった模様で、同人が「会議を司会され、歴史的な演説」をしたとされる。その全文は報じられていないが、報じられた演説内容の骨子は次のとおりである。

・「今年、諸側面で予想できなかった不可避な挑戦に直面した主客観的環境と朝鮮半島周辺地域情勢について分析」

・「党第7回大会以降の過去4年間、我が党と国家事業において成し遂げた成果と欠陥について評価」。「特に、党第7回で提示した大会国家経済発展5カ年戦略目標遂行の最終年度である今年の人民経済各部門が達成した目標遂行実績について資料的に詳細に報告」

・党中央委員会政治局において、「7回大会決定貫徹のための事業で表れた偏向と欠陥を全面的に、立体的に、解剖学的に分析総括し、党と政府の前に提起された新たな闘争段階の戦略的課題を討議決定するため」第8回大会の招集を提議した。

・「(第8回)党大会運営と関連した綱領的指針を明示」。「(同大会で)新たな国家経済発展5カ年計画を提示することになると言及」「(同)大会で討議すべき案件と大会準備事業で提起される問題について具体的に明示」

 金正恩は、以上の演説に続いて、8回大会招集に関する全員会議決定書草案を朗読、「参加者たちは爆発のような歓呼と熱烈な拍手で上程された議題を支持賛同し」、同大会を来年1月に召集することを決定したとされる。

 別途に報じられた同決定書は、現状についてより率直に「予想できなかった挑戦が重なることに即して経済事業を改善できず、計画されていた国家経済の成長目標が甚だしく達成できず、人民生活がはっきりと向上できない結果」を指摘した上で、次期大会の目的として、「(過去5年間で)収めた経験と教訓を分析総括」し、「情勢の新たな要求に基づき、正しい闘争路線と戦略戦術的方針を提示する」ことを挙げている。

 このほか同決定書では、議題を①中央委員会事業総括、②中央検査委委員会事業総括、③党規約改正、④党中央指導機関選挙とすること、代議員を党員1,300人当たり1人の決議権代表者、候補党員1,300人当たり1人の発言権代表者の比率で選出すること、などを明らかにしている。

 要するに、今回の全員会議は、経済が「予想外の挑戦」(おそらくコロナ蔓延と洪水被害を指すのであろう)によって、「国家経済発展5か年戦略」の目標の多くが達成できない見込みとなっている現状を具体的に説明するとともに、その原因。教訓を指摘し、それに基づいて来年から新たな「5か年計画」への取組みを開始するとの方針を示し、その「仕切り直し」の場として、党大会を開催することを決定したものといえよう。

 なお、大会招集は、金正恩個人ではなく、政治局会議の提議によるものとされている。同会議の報道においては、それを示唆するような内容はなく、意外な印象を禁じ得ないが、手続き的には、順を踏んだものであり、政治局会議開催直後の全員会議開催の理由を説明するものといえよう。

 「5カ年戦略」の目標未達成を早々と認めたことは、過去の対応に比べれば、率直なものと評価すべきかもしれない。ただ、その理由については、昨年後半以降、同「戦略」への言及が急に減少していた(つまり、既に達成が困難な状況になっていた)ことなどを勘案すると、「予想できなかった挑戦」にすべてを帰することはできないとみるべきであろう。そういう意味でいうと国際的なコロナ蔓延は、北朝鮮指導部にとっては、経済不振の責任転嫁を許す「天祐」の側面も持っているのかもしれない。

 いずれにせよ、当面は、従前の方針を継続していくことが示されたといえよう。