rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

9月7日 金正恩の「首都党員師団」編成の呼びかけに呼応の動き

 

 本日の「労働新聞」には、昨日公開された、咸鏡南北道の台風被災地復旧のための「首都党員師団」への参加を呼び掛ける金正恩の親筆書簡(5日付け)に呼応する動きが直ちにあらわれ、同師団の編成及び派遣準備が既に完了したことが大々的に報じられている。

 記事の掲載順序とは異なるが、まず、平壌市党委員会の動きを紹介する「わずか1日の間に最精鋭党員師団を組織」と題する記事によると、同市党委員会は、書簡公開を受けて、「即時」に緊急協議会を開催した。同協議会では、「最精鋭党員師団を組織する事業とともに(資材供給などの)条件保障と関連した関連した様々な対策的問題が具体的に討議」し、党員に対する宣伝活動などを即時に展開した。その結果、「6日午前、新たに組織される最精鋭党員師団に(参加を)歎願した党員だけでも、その数を数えきれなかった」。

 そして、「市党委員会責任幹部達は、党中央の意図に合うよう(師団)指揮部と建設力量を最精鋭党員師団らしく整えるための事業と(派遣に先立っての)決起集会から出発にいたるまですべての事業を隙間なく組織し、些細な偏向も出ないようにし」、「(市内の)各級党組織では、隊員選抜を責任をもって行う一方、建設に必要な貨物自動車と掘削機、シャベル・カーをはじめとした重機械と作業工具、資材を円満に備えるようにする事業が活発に行われ」、それらの結果、「(師団の編成・派遣のための)準備が一日で全部結束された」という。

 更に、参加予定者に対しても、「現地住民に些細な不便も与えず、被害地域に機動展開し、作業に進入することができるようにする事業が積極的に進捗し、現在、すべての単位の出発準備が完了した」とされる。

 一方、金正恩の書簡に対する一般党員の反応などについては、「党から稲妻が発せられた、雷鳴で回答しよう 勇躍被害復旧戦闘場に駆け付ける火のような熱意で首都党員の心臓が湧きたつ」と題する記事などで紹介されており、「老党員」や「夫婦党員」などを含む多数の党員が直ちに師団参加を歎願し、「元帥様の公開書簡が党機関紙に掲載されたときからさほど(時間が)たたない間に、首都の各区域と機関では、被害復旧戦闘場に向かう(党員師団の)隊列編成が全部締め切られた」としている。

 このほか、「党中央の親衛隊伍、我が党の核心力量の威力を満天下に轟かせる! 敬愛する最高領導者が送られた公開書簡に回答する首都党員達の火のような誓い」との共通題目の下、「首都党事業の総火力を最前線に」と題する市党委員長をはじめとする同市各界各層の人物の投稿文も掲載されている。

 このような「首都党員師団」編成・派遣の狙いについては、昨日の本ブログで推測したところであるが、「首都の党員同志達、前へ!」と題する政論は、それを端的に示している。すなわち、「党中央の呼びかけを奉じて被害復旧戦闘場に先を争って歎願する党員達の胸の中でたぎっているものは何か」とした上で、「元帥様の空よりも広く海よりも深い人民に対する愛の世界である」として、金正恩の人民に対する「恩徳」を強調している。更に、同活動の結果として期待しているところについて、「党中央の呼びかけに奇跡創造の雷声で回答していく誓いで鼓動する首都党員の心臓の脈動から我々は、10月(10日の党創建75周年記念日)の空の下に爆発する労働党万歳の声を既に心の中で聞いている」と述べ、体制支持の強化につなげようとの思惑を如実に示している。

 それにしても、書簡発表の当日にこれだけの対応が展開される様には驚かされる。あるいは、書簡公開以前ないしは政務局会議開催以前に、既に「首都党員師団」の編成・派遣という構想が平壌市側に予告されていたのかもしれない。ただ、それにしても、迅速な対応であることは間違いない。まさにこのような対応こそが、今、北朝鮮指導部が求めている、党組織の在り方を体現したものといえよう。「党中央の命令下達→即接受・実践」という対応ぶりの模範を示すことも、このキャンペーンの一つの狙いであったのかもしれない。

 なお、昨日のブログで書き忘れたが、金正恩の「書簡」中には「党中央」との表現が多用されているが、それらは、すべて「私」(つまり自分自身)という意味で用いられている。そして、それを受けた本日の上掲の記事においても「党中央」が頻出しているが、やはり金正恩その人を指す意味としか考えられない形で用いられている(だからと言って、それとは別の存在を指す用法の可能性は否定できないが)。