rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月1日 金正恩朝鮮総連分会代表者大会参加者あてに祝賀文送付

 

 標記祝賀文(11月1日付け)に関し、聯合通信などが「日本人民との友好親善活動を能動的に展開」することを求めた部分に焦点を当てて報じており、それだけ見ると、あたかも対日宥和的姿勢を示唆したかの印象を受けかねないが、事実は、まったくそうではない。祝賀文の全文を読めばそれは一目瞭然であるが、その暇もない読者の為に、同祝賀文に盛り込まれた朝鮮総連に対する基本的要求を整理しておきたい。

 金正恩の総連に対する要求(すべて、「・・・しなければなりません」)といった式に述べられている)は、まず、「すべての分会を偉大な金正日愛国主義が具現され、心を一にして固く団結し前進する愛国集団」にすること、そして「すべての同胞たちを主体の信念と愛国主義の精神を帯びた愛国者」にすることである。このような組織造りがすべての基本に位置付けられているといえよう。

 そして、そうした組織に求める具体的な活動の一つは、「分会を民族性固守の拠点」とすること、すなわち、「民族教育を在日朝鮮人運動の天下之大本(基本の意味)とみなし、同胞子女を総連のバトン、愛国愛族の継走棒を引き継いで行く働き手として育てるための事業」に力を注ぎ、「我々の学校を中心として多様な民族文化体育活動を旺盛に展開」することである。

 もう一つの活動は、「総連のすべての分会を祖国の自主的統一と社会主義強国建設に特色を持って貢献する愛国愛族の堡塁」とし、「母なる祖国の富強繁栄のための聖なる道に愛国衷情」を捧げることである。

「日本人民との友好親善活動」は、このような文脈の下で、「組織外にいる同胞(つまりは民団系韓国人など)との民族団合事業」を通じて「祖国統一の歴史的偉業を成就する上で積極的に貢献」すること(いわゆる対韓活動)に次ぐものとして、「在日同胞社会の存立と発展に有利な対外環境を準備」するための活動として求められているのである。

 ちなみに、前述の「我々の学校」とは、いうまでもなくいわゆる在日朝鮮人学校を指している。以前にも本ブログで指摘したことがあるが、金正恩自身の言葉を通じて、在日朝鮮人学校を総連の後継者育成のためのものとして位置付けているのである。昨今の朝鮮人学校に対する日本政府からの支援金支給対象からの排除に関し、それを合法とする高裁判決が出たことに対して、韓国の報道でも、それを何か「在日朝鮮人差別」のようなニュアンスを込めて報じている印象を受ける(明確にそうといっているわけではないが)。その適否については、以上のような事実関係を十分に踏まえた上で議論してほしいものである。