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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年1月18日 2020年国家予算執行状況と2021年予算の概況

 

 標記に関する最高人民会議第14期第4回会議における高正範(音訳)財政相の報告骨子は、次のとおりである。

 まず、昨年の予算執行状況については、収入は、対予算比で100.1%(前年比104.3%)、支出は、対予算比で99.9%であったという。自然災害とかコロナ防疫とかあったが、支出額が予算の範囲内であったということになる。

 支出の部門別内訳は、人民経済発展に45.3%(建設部門に19.1%とされているのは、この内数か?)、保健・教育など社会主義文化発展に36.5%、国防建設事業に15.9%とされている。以上を合計すると97.2%となる。

 次に、2021年予算については、まず収入面について、総額で対前年比100.9%とし、取引収入金(対前年比100.8%)と国家企業利益金(同101.1%)によって、その83.4%を占めることを見込んでいる。

 支出面については、対昨年比で101.1%の増加とし、部門別内訳では、経済建設への投資を昨年比100.6%と、人民経済基幹工業部門と農業・軽工業部門への支出は100.9%とするとし(両者の関係は不詳。構成比には言及せず)、国防費には支出総額の15.9%を、人民的施策を具現する事業(=社会主義文化建設?)に33・9%(うち教育部門は対昨年比103.5%、保健部門は同102・5%、文化芸術部門は同102.7%)を充てるとしている。

 例年のことだが、実額を一切明らかにしないことに加え、昨年と今年の説明に用いる分類が必ずしも同一でないことなどから、正確な推移は判然としないが、今年の国家予算全体の伸び率よりも経済部門の伸び率のほうが低く抑えられているようにみえる(当然、構成比も低下のはず)。また、社会文化部門については、それを構成する個別部門の伸び率がいずれも全体の伸び率よりも高いにもかかわらず、予算全体に占める構成比が低下しているのは何故か疑問である。一方、国防費は、昨年とまったく同じ構成比とされている(実態をどれだけ反映しているかは不明だが、趨勢を示す意味はあろう)。

 少なくとも、以上の数字を見る限りは、本年の予算編成にあたって、これまで以上に経済建設を重視する、そこに予算を集中させるという意図は感じられない。「新たなる並進路線」(1月15日付け本ブログ参照)の採用を疑う根拠がここにもある。