rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年1月18日 最高人民会議第14期第4回会議が開

 

 標記会議が予定通り1月17日開催され、本日、その開催状況、報告などが報じられた。

 議題も予告されたとおり、①組織問題:金徳訓総理の提議で、筆頭の副総理兼国家計画委員長に党大会で政治局候補委員に選出された박정근(朴正根:音訳)を充てるなど内閣メンバーを大幅交代。中央検察所長も交代、②「国家経済発展5カ年計画」実践:金徳訓が同計画に関する内閣事業報告、③2020年国家予算の決算と2021年国家予算策定:財政相が報告であり、②,③に関連して、朴正根副総理ら18人の代議員による「討論」が行われたとされる。各報告及び討論の全文が掲載されている。

 このうち、②の新5か年計画についての報告は、党大会における金正恩の「中央委員会事業総括報告」の際の同計画に関する内容をほぼそのまま踏襲したもので、概して新味のないものであった。敢えて特色と言えば、5か年戦略における目標未達の原因として、同計画の目標が「主観的欲望にとらえられて作成」されたことに加え、「経済指導幹部が・・・条件多発を先に立てつつ、敗北主義に陥り、눈치놀음(周りの様子をうかがうの意か)と要領主義を発揮(し)・・・戦略目標遂行をほとんど中途半断したこと」などをあげ、内閣及び経済指導幹部の姿勢・態度といった問題に責任をほぼ全面的に帰着させていることである。そういう総括で今後の状況改善の本当の意味での「教訓」となりえるのか、疑問を感じる。

 また新5か年計画における産業部門ごとの課題についての言及も極めて総花的であった。参考までに部門ごとの言及順序・量を記すと、まず、金属工業11行、化学工業12行、電力16行、石炭10行、機械工業4行、採掘工業4行、鉄道運輸4行、建設5行、建材工業4行、商業4行、環境・都市経営4行、対外経済4行について言及したのに続き、「人民生活向上」を掲げた上で、農業9行、軽工業9行、水産業4行、地方経済4行、農村整備4行の課題をあげている。このほか、経済管理10行、科学・技術11行に言及している。ここからは、重工業部門の金属・化学部門、エネルギーに関する電力・石炭部門及び食糧生産のための農業、という5部門にほぼ同じ比重が置かれていることがうかがわれる。

 このほか、細かい注目点をあげると、金剛山地区開発が対外経済部門の中で言及されていることで、同地の観光開発が外貨獲得を主な狙いとしていることがうかがえる。また、同報告の中で、具体的な数値をあげて目標が示されたのは、平壌市5万世帯、剣徳地区2万5千世帯分の住宅建設だけであったことも指摘しておきたい。

 一方、経済管理に関しては、概して「国家の経済組織者的機能」強化が基調であり、改革的施策を積極的に拡大する姿勢はうかがえない。「社会主義企業責任管理制」についても、同「報告」では言及はなく、朴正根副総理の「討論」の中で、その効果が発揮されなかったとの指摘がなされているだけである。前回大会では、金正恩の報告に言及があったことと比較すると、消極化の印象を禁じ得ない。

 こうした「報告」を読む限りでは、「欠陥」の教訓に基づく抜本的な見直しと言っても、個別幹部の精神・姿勢のレベルの話に矮小化され、経済体制・路線などの構造的問題に切り込む意図はなさそうに思われる。

 予算関係については、稿を改めて論じたい。