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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年2月11日 中央委員会全員会議続行(3日目の概要)

 

 本日の「労働新聞」は、昨日に続き、標記会議3日目(10日)の状況を報じている。

 まず、初日からの金正恩の第1議題に関する「報告」が継続され、「人民経済計画遂行を法的に担保し、全党的に党事業の火力を経済課題遂行に集中すること」が論じられた。

 このうち、前者については、「経済計画の樹立と執行過程に対する法的監視・統制を強化」すること、換言すると「経済活動において現れるあらゆる違法行為との法的闘争を強力に展開」すべきことが強調されたほか、「新たな部門法を制定完備する」ことも提起された。

 後者に関しては、「従前の経済事業において現れた欠陥は、「党組織が党政策貫徹の組織者、旗手としての責任と役割をまっとうしていないところに原因がある」との分析を示した上で、党組織が「今年の経済課題遂行結果について全面的に責任を負うとの立場で党的指導、政策的指導を強化」するよう求めた。

 金正恩は、「報告」の結びの部分で、今次会議の意義として、「1年の事業をはじめる段階から誤った部分を正し、・・・幹部の中に内在していた消極性と保身主義をはじめとした思想的病態を探し出し是正できた」ことをあげ、後に行われる部門別協議会において、「真摯な討議を経て、発展志向性と力動性、牽引性、科学性が保障された革新的目標を樹立」するよう訴えた。

 こののち、同「報告」に関し4人が「討議」を行った。その発言者と注目点は次のとおりである。なお、各人の「討議」内容は、いずれも全文ではなく、それぞれの発言の骨子を紹介する形で報じられている。

  • 内閣総理(常務委員)金徳訓:「内閣が今年の戦闘目標を党の意図に即して設定できず、発展志向性と力動性、牽引性、科学性が欠如した計画数値を提出したことについて深刻に批判」
  • 化学工業相마종선:当面の課題として、「窒素肥料生産能力拡張工事と炭酸ソーダ生産工程改建を今年中に無条件で完了」、「営農用窒素肥料供給計画を期日内に遂行し、重要化学製品を円満に生産保障」
  • 中央検察所長우상철:「内閣の主動的役割にブレーキをかける一切の行為を徹底して制御、制圧」、「特に、特殊の壁を盾にして法の統制の外で社会主義経済管理秩序を乱暴に違反する単位に対する法的監視を攻撃的に、連続的に強く進行」「(検察部門で)違法行為を黙認助長する現象が現れないようにする」「党の経済政策執行を怠る現象に同調、妥協、譲歩する現象を徹底して排撃」
  • 党中央委員会秘書(常務委員)趙勇元:「一部幹部の中に現れている深刻な欠陥」の代表的例として、「工業部門で条件多発を発揮して人民生活消費品生産計画を全般的に低めて提起」「建設部門で党中央が首都市民に約束した今年1万世帯住宅建設目標を敢えて低くして提起」「電力工業部門で経済建設と人民生活の切実な要求を無視して、電力生産計画を人為的に低めて提起」「水産部門で漁労活動を積極化し人民に魚を送る準備をしなかった」ことなどを指摘、それらについて、「総秘書同志の思想と意図に反対する反党的、反人民的行為」ときめつけ糾弾。

 「討論」に続いて、「決定書草案を作成するための協議会」が開催された。報道された協議会及び、それぞれを「指導した」とされる人物(音訳含む)は、次のとおりである。

  • 工業分科協議会:党秘書趙勇元、内閣総理金徳訓
  • 農業分科協議会:党(組織指導)部長金在龍、党(農業)部長李鉄万、内閣副総理兼農業相朱鉄規
  • 軽工業分科協議会:最高人民会議常務委員長崔竜海、党秘書(宣伝扇動部長)朴太城、党(軽工業)部長朴明順、内閣副総理李城学
  • 建設分科協議会:党秘書(中央検査委委員長)鄭相学、内閣副総理朴勲、建設建材工業相徐種進

 報道は、同協議会に関し、「討議を深化させている」とした上で、「会議は継続される」と報じているので、協議会が4日目(11日)に継続されることも考えられる。

 3日目の進行状況をめぐる以上の報道からうかがえるのは、今次全員会議が単に、党大会で策定した「5カ年計画」に基づき、中央委員会会議で今年度計画を樹立するという実務的な流れの中で開催されたものではなく、いったん、内閣が(おそらく党中央の関連部署の内諾を得た上で)今年度計画を策定したものの、金正恩がそれに不満を抱いて、作り直しを命じたために開催されたということである。そして、内閣のそのような「消極性」の背景として、「特殊単位」の存在(それによる内閣の力の限界・制約性)が改めて浮上したため、あわせてその去勢をはかろうとの狙いもあったのであろう。

 そのような意味から、上掲「討議」のうち、内閣総理と化学工業相は批判を受けての「反省・自己批判」であり、中央検察所長は「決意表明」、趙勇元秘書は金正恩の補足説明が基調であったとみられる。

 また、部門別協議会において、同じく「指導」にあたったとされる人物も、そのような意味で、反省しつつ計画の策定を行う当事者とそれを監督する、いわば「お目付け役」的な人物に分かたれるように思える。後者と目される人物については、下線を付した。

 明日以降の会議で、以上のような「批判」を反映した人事異動が行われるのか否か、「反党的」とまで言っておいて「反省」だけで済ませることができるのか、大いに注目されるところである。