rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年4月23日 復古的精神主義の強調と科学技術重視思想の並存

 

 本日の「労働新聞」は、「首領の呼びかけ、革命の要求であるならいかなる不可能も知らなかった戦後復旧建設時期と千里馬時代の英雄たちのように生き闘争しよう」との共通題目の下、二つの政論はじめとする様々な記事を掲載している。

 そのうち、「我が党は英雄的な時代の精神で生き闘争することを要求している」と題する政論は、「1950年代戦後復旧建設時期と(1960年代の)千里馬時代の英雄のように生き闘争しよう、これが現時期の党の要求であり、革命の新たな勝利を勝ち取るための根本担保である」と主張し、一連の記事掲載の狙いを端的に示している。

 その趣旨は、それら時代が「最も過酷な試練の中で最も驚異的な勝利を成し遂げた時代」であったと規定し、「首領に対する忠誠心さえあれば、この世のいかなる奇跡も成し遂げることができるということがまさに戦後復旧時代と千里馬時代の英雄の闘争が証明した偉大な真理である」ことを主張した上で、現在の北朝鮮の状況について、「もちろん、我々が直面する難関は大きい。しかし、いかに困難であると言っても、空き地に徒手で建築したあの時ほど困難であろうか」と反問して、金正恩に対する徹底した忠誠心によって、苦境を打開することを訴えるものといえよう。

 そのような狙いは、「彼らが我々を見つめている」と題する政論における「すべての人民がその時代の革命観、人生観に照らしてもう一度、自らを新たに誕生させなければならない、まさにこれが革命の新たな勝利に向かって進む今日の闘争において最も重要な時代的要求である」などの主張によっても繰り返されている。

 この他の記事も、これら時代の様々なエピソードを紹介しつつ、それを範とした今日の苦境打開を訴えている。

 「労働新聞」の政論は、特に強調したい事柄などについて時折掲載されるのもので、それが同日に二つ並べて掲載されるというのは極めて異例といえる。それだけ、このテーマに基づく思想教化に並々ならぬ力を注いでいるということを示すものといえよう。

 ただし、これだけ書くといかにも精神主義一辺倒に陥っているかに見えるが、実は、本日の紙面には、「自立的科学発展観、自立的経済発展観確立は、社会主義経済建設の重要な要求」と題する長文の論説が掲げられている。

 そこで「自立的科学発展観」とは、「主体的立場において、自らの頭で探求し、開発創造して名実ともに我々式、自分のものであると言える科学研究成果を収め、技術発展を推動していく観点と立場」であり、「自立的経済発展観」とは、「自体の科学研究成果と技術発展に基づいて、いかなる外部的要因にも左右されず自らの力で経済発展を成し遂げていく観点と立場」と規定されている。そして、「今日の時代は科学技術と生産が密着し一体化した知識経済時代である。科学技術こそすなわち生産であり、経済発展である」として、科学技術が自立的発展の核となることを強調している。

 その上で、現在の苦境に関して、「すべてが不足し、困難である今日の状況において、我々が依拠すべき戦略的資産は科学技術である」として、科学技術の活用による打開を訴えている。また、興味深いのは、「自立的」であることを強調しつつも、国外からの知識導入を完全には否定していないことである、それについて、「別の国の価値ある科学技術を受けいれても、わが革命の利益と我が国の具体的な実情に即して精神を正しく持って完全に我々のものとするのであれば科学技術の自立性、主体性強化に実際的な変化、実質的な成果をもたらすことができる」と主張している。

 以上の主張のどちらか一方だけに着目するのではなく、それを並行して主張しているところに北朝鮮の路線の特徴を見出すべきであろう。