rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年4月25日 評論「党組織は実質的な月生産総括で今年の人民経済計画遂行を強力に推動しよう」

 

 標記評論は、企業所、工場などの生産単位における党組織が行う毎月の「生産総括」の重要性を強調し、その在り方を論じたものである。

 まず、その重要性について、「(各単位で)重要な決定が採択され、その貫徹のための闘争が展開されれば、必ずそれについて総括し、再布置する事業を精密に実施」しなければならない」とした上で、それを行うに際して留意すべき点として、次のような主張をしている。

 最初に挙げられているのは、「何よりも、総括に先立ち、生産計画遂行状況を具体的に了解掌握し、党委員会において集団的に討議し、科学的な総括資料を作ること」である。そこでは、「月生産計画遂行に関する実態資料だけでなく、幹部の月間党的任務分担遂行状況と党決定執行のための組織思想事業進行状況、事業過程で提起されたあい路と難関などを漏れなく掌握」し、そうした情報に基づいて「あらわれた欠陥を現象ではなく、その根源を掘り下げて科学的に診断を下す」ことを求めている。

 次に、「月生産総括を(行政実務的にではなく)批判と思想闘争の方法で進行し、政治道徳的刺激と物質的刺激を正しく配合することによって、幹部と生産大衆を覚醒させ、奮発させる契機になるようにする」ことを求めている。なお、ここで、「政治道徳的刺激と物質的刺激」の配合については、前者を主とする原則を堅持すべきとしているが、それにせよ、後者についても言及していることは、「総括」の在り方を論じる中では注目すべき点かもしれない。

 最後に、「技術発展計画の遂行状況を共に総括」することによって科学技術の導入や人材育成を促進するとともに、「単位で創造された良い経営管理経験を発表」するなどして「総括過程が幹部に経済管理方法をはじめとした必要な知識を伝習させる過程となるようにする」ことである。この点は、このところの「科学技術重視」の傾向を反映した注文であろう。

 確かに、各生産単位において。毎月、こうした総括活動を実質的に行うなら、計画の実現を担保する上で非常に有効であろうと思われる。

 ただ、それにもかかわらず、現実には経済建設が慢性的に計画未達に終わっているということは、党組織の活動が形骸化しているためなのか、あるいは、そうした努力ではいかんとも克服しがたいほど資材・エネルギー供給などの客観的環境が厳しい状況にあるためなのか、と考えざるを得ない。後者が否定できないことは言うまでもないが、同時に、「信念で克服できない困難はない」という趣旨の北朝鮮の主張に接すると、前者にも相当問題があるのかとも思われる。

 例えば、ここで取り上げられている「月間総括」がどのように行われているのかといった点などについて、幹部の経験を持つ脱北者らから精密なインタビューを行うなどすれば、それなりに北朝鮮経済の実情を浮き彫りにできるのではないだろうか。韓国の北朝鮮専門家には、「南北経済統合」などといった夢想を語るよりも、そうした地に足の着いた研究を期待したいところである。