rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月7日 論説「首領に対する忠実性を信念と意志で堅持しよう」

 

 本ブログでは、これまでにも、先の党大会における金正恩総秘書就任に伴って、党規約を改正する中でおそらく金正恩を「党の首班」と規定し、これを契機に同人を「首領」として正式に位置づける動きの兆しが垣間見られることを指摘してきた。標記論説も、その一つといえるものと考えられる。

 まず、「首領に対する忠実性」について、「首領に対する忠実性は革命家の固有の思想精神的風貌であり、ここでの基本は革命的信念と義理である」ので、「義務感による忠実性、責任感による忠実性は真の忠実性ではない。首領に対する忠実性は、義務である前に信念となり、良心となり、義理となってこそ絶対的で無条件的な忠実性となることができる」との原則論を述べる。

 次に、金正恩に対する忠実性について、「敬愛する金正恩同志に対するわが人民の忠実性は、革命的信念に根を置いた最も強固な忠実性であり、純潔な良心と義理、道徳に基づく真実の忠誠心である」と述べ、まさに「首領に対する忠誠心」の要件を満たすものであることを示す。

 そして、結論として、「わが党員と勤労者、人民軍将兵と青年は、革命先烈が受け継いだ忠実性のバトンを力強く続け、敬愛する金正恩同志の領導にしたがって力強く前進する」としている。

 限られた部分の引用であるので十分に示し切れていないが、同論説は、直接的な表現こそないものの、全体を通じると金正恩を首領とみなす前提に基づくとしか考えられない論理構成になっていると考えられる。

 また、同論文のもう一つの注目点は、そのような忠誠心と関連させて、例の「隆盛繁栄する社会主義強国」構想が示されていることである。すなわち、「敬愛する総秘書同志が前例のない困難な環境の中でも近い将来に隆盛繁栄する社会主義強国を打ち立てる巨大な作戦を披歴されたことは、我が人民の燃える忠誠心を信じられたためである」という。

 換言すると、このような遠大な構想は、「首領」としての地位を得たことの「あかし」として、あるいはそのような地位を得たことの正当性の根拠として、打ち出されたものとも考えられる。

 なお、本日の「労働新聞」には、同論説に続けて、そのような「強国」についての考え方についての独特の考え方を示す評論も掲載されている。それについての紹介は、別項に譲りたい。