rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年7月26日 各地で渇水被害が深刻化

 

 本日の「労働新聞」は、「非常な覚悟を抱いて渇水被害を防ぐための闘争に一体となって奮い立とう」との共通題目の下、全国的な異常気象の影響で渇水被害が深刻化し、その対策に全力をあげていることを報じる記事や写真などを掲載している。

 そのうち、「各地で渇水被害発生、積極的な対策講究」と題する記事によると、「北西太平洋亜熱帯高気圧の影響により去る12日から我が国の大部分の地域において暴炎(熱暑)が持続し、農作物が渇水被害を受け始めた。7月中旬までの降水量は、全国平均21.2mmで平年の25.8%程度であり、1981年以降気象観測史上2番目に少ない降雨量であった」という。その結果、各地で深刻な被害が出ており、例えば、黄海南道では、「数千町歩の田とトウモロコシ畑に渇水が生じて」いるという。

 また、「力量と手段を総動員して 黄海北道にて」、「隙間ない作戦と指揮で 平安南道にて」「水管理を責任を持って 陸海運省にて」などの記事でも、各地域で「渇水による農作物被害を防ぐための総突撃戦に力強く沸き立っている」として、耕地への水供給のため各種対策を講じていることを伝えている。なお、ここで陸海運省が出てくるのは、同省が閘門の管理などを担当しているためで、それを通じて河川の水量調整などを行っているとしている。

 北朝鮮では、当初、昨年の長雨被害の教訓から洪水対策に力を注いできたところだが、皮肉にもこのたびは逆に水不足に苦しむこととなった。いずれにせよ、水の管理が重要ということになる。

 余談だが、前掲の「暴炎」現象に関しては、平壌市を含む内陸各地で摂氏35度以上の日が続き、一部地域では摂氏38度を記録したことなどがかねて報じられていた。そのニュース映像の中で注目されたのは、街を歩く人の中で多くが手持ちの扇風機を使っていることで、どこの国の製品かは不明だが、相当に普及していることがうかがえる。また、平壌市内などでは、街路でかき氷などを売る売店が盛況である様子もしばしば写されており、一般に流布している「食糧不足に苦しむ市民」というのとは異なる印象を受けたことも紹介しておきたい。

 ただ、今回の渇水被害が収穫に影響を与えるようだと食糧不足もいよいよ現実化するかもしれない。ただ、何年か前にも、水不足が相当喧伝された割には収穫は比較的良好であった年もあったように記憶しているので、気象状況をはじめとして、今後の推移をみていく必要があろう。