rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年9月7日 軍関係人事を決定・発表

 

 本日の「労働新聞」は、「朝鮮労働党中央委員会政治局公報」(日付けはなし)を掲載した。

 同「公報」は、政治局が朴正天を政治局常務委員会委員に選挙し、愈進、林光日、張正男(いずれも音訳)を政治局候補委員に補選することを決定した、としてこれら人物の写真を役職付けで掲載している。それによると、朴正天=党中央委員会秘書、愈進=党中央委員会軍需工業部長、林光日=朝鮮人民軍総参謀長、張正男=社会安全相、となっている。また、写真では、朴正天と愈進は背広を、林光日は星4つ(大将)の肩章の着いた軍服を、張正男は星3つ(上将)の肩章の着いた軍服を着用している。

 「公告」から直接わかるのは以上である。以下とりあえずのコメント及び注目点を記したい。

 何よりも不明なのは、この決定が9月2日に開催された政治局拡大会議の際の「組織問題」に関する決定事項なのか、あるいは、その後になされたものなのか、という点である。前者であれば、なぜ、そのときに報じず、今になって明らかにしたのか。上記報道の文面で決定の主体を「政治局拡大会議」ではなく「政治局」としていることからすると、後者である可能性も排除できないように思われる。

 個別の人物に関していうと、朴正天は、かつての政治局委員・軍総参謀長から政治局候補委員にいったん降格された後、この決定により、常務委員に抜擢されると同時に、軍服を脱ぎ、党秘書の職に就いたことになる。それが果たして同人の権限拡大を意味するのか、あるいは「棚上げ」を意味するのかは検討の余地のある問題であろう。

 愈進は、かねて軍需工業部副部長として知られていた人物であるので、順当に昇格したことになる。では、その結果、常務委員・秘書から軍需工業部長に降格されたとみられていた李炳哲がどうなったのか、関心がもたれる。

 林光日は、軍の副総参謀長・作戦総局長を経て偵察総局長を務めていた人物であり、これも順当な人事であろう。

 張正男は、これまで軍の中で浮沈を繰り返してきた人物であるが、今回、社会安全部に転出したことになる。これまでも、社会安全相は、軍の要職を務めた人物が就くことが恒例化していたので、想定内の人事といえよう。この結果、これまで社会安全相の地位にあった李英吉はどうなったのか、先の政治局拡大会議では、政治局委員であったとみられるので、別の要職に就いた可能性が高いと考えられるか、具体的にどこに行ったのかは分からない。

 いずれにせよ、この時期に軍高官の人事が行われた背景なども含め、今後の注目を要する動きであると考える。

  今見た韓国報道によると、北朝鮮が9月9日の政権樹立記念日に軍事パレードを実施する兆候があるとのことなので、そこでは、展示される新型武器とともに、こうした人事関連の出現動向にも注目したい。