rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年9月30日 金正恩が南北通信線復元方針を表明(とりあえずのコメント)

 

 昨日、最高人民会議の2日目会議で金正恩が施政演説を行い、南北通信線を10月初め(明日から?)に復元させる意向を示したことが大きく報じられている。

 そこだけ見ると、南北関係改善に舵を切ったかのような印象を受けるが、演説全体は、米韓に対する認識,姿勢において、文大統領の「終戦宣言」提案以降に出されてきた各種「談話」のラインを踏襲したものと言える。むしろ、トーンとしては、最初に出された外務省副相の談話(最も厳しめ)に近い印象がある。

 もちろん、通信線復元を金正恩自らが述べたことの意味は軽視できないが、それは、昨日の本ブログで予測した「『南北関係改善』を演出」の措置そのものというよりは、その前段階の予備的措置であり、本格的「改善」に向けた措置は、これに応じて文政権がしかるべき対応を取るのを見極めた上で、ということと考えられる。

 例えは下品だが、「お手」と言ったら手(足?)を出したので、とりあえず小さいビスケット(←これが通信線復元)を与えた上で、先のほうに「ご馳走」(例えば首脳会談)を並べて「ジャンプ」と命じているところといった状況といえよう。

 ただし、問題は、どこまで高く、遠くジャンプしたら「ご馳走」がもらえるのかがはっきりしないことである。そこは自分で考えろということか、あるいは、既に水面下のやりとりなどを通じて何らかの示唆がなされているのか、そこは知る由もないが、方向性としては、かねて指摘してきたとおり対米説得(対北交渉姿勢の転換)を期待していると考えられる。ただし、それができない場合、韓国独自でできることとして別に何があるのか、そこはよくわからない。

 なお、最高人民会議関連で私としてのサプライズは、「通信線復元」よりは、むしろ金予正の国務委員選出である。崔善姫と交代の形なので、対米関係担当といった形での選出といえようが、ここにも対米関係進展に向けた金正恩の意欲がうかがえる。