rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年10月17日 論説「施政方針は我が党の理念であり構想である」

 

 標記論説は、先の最高人民会議での「施政演説」で示された「施政方針」について、それが「我が党」すなわち金正恩の「理念、構想」を反映したものであることを改めて強調するものである。その論理構成は、必ずしも判然としないのだが(理解力不足?)、主に強調されている事柄として、次の3点をあげることができよう。

 第1は、同方針が「党」の「自信」に裏付けられたものであるという点である。それを示すのが「歴史的な施政方針は、人民の理想、社会主義のより明るい明日を促進しようとの我が党の確固たる自信心の表出である」との主張である。そして、そのような「自信」の根拠として、「経済建設分野において以前の時期とは画然として区別される一連の肯定的変化が起きており、その他の部門を革新するための事業が深化し、国の復興発展を裏付ける進一歩の成果が収められている」ことなどが挙げられている。

 第2は、社会各部門の全般的発展の必要性を強調している点である。すなわち、「歴史的な施政演説は、社会主義建設において全面的復興、全面的発展を成し遂げることができるようにする威力ある実践の武器」であり、「新たな発展は、決して特定の部門における発展を意味しない。一、二個の部門においてではなく、各部門をはじめとした社会全般を皆一緒に発展させなければならない」と主張している。

 第3は、党員に対する期待であり、「(こうした)党の理念と構想を実現する上で党員が先頭に立たなければならない」と主張している。とりわけ、党幹部の役割が強調されており、成果如何は、「我が幹部の準備程度と役割にかかっている」として、その発奮を促している。

 こうした主張は、本ブログでも繰り返し提起している今次「施政演説」の狙いを考える上で重要な示唆を含むものといえよう。

 第1の点は、今日、北朝鮮の中からも外からも、その「困難、試練」がしばしば強調される中で、むしろ楽観的側面が今後の発展を担保するものとして示されていることが興味深い。もちろん、それがどの程度、客観的事実(現実の成果)あるいは金正恩の主観を反映した主張であるのかは疑問である。いずれにせよ、そうした主張により、国内の悲観的ムードを払しょくしたいとの思いが働いているのであろう。

 第2の点も、一般に経済政策などをめぐり、どこに重点を置いているのかが注目される中で、あえて、特定の重点部門の発展を目指すものではないと宣言していることは興味深い。これは、このところの基幹産業も人民生活もという総花的政策の正当化を目指したものといえないだろうか。

 第3は、党機関紙として、いかなる問題に関しても必ず提示すべき、いわば定型的主張といえよう。

 こうした論稿に対する検討を経て、「施政演説」の狙いが徐々に浮き彫りにされているように感じる。