rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年11月14日 評論「我が地で我々のものをもってできないことはない」

 

 標記評論は、端的に言うと、既存制度に対する自信感、信頼の堅持を訴えるもの。

 まず、「偉大な歴史と精神、伝統が創造されたこの地において豊富な闘争経験をもって強力な力を備蓄した我々が出来ないことなどない」と主張する。

 その上で、それを信じることの重要性について、「自分のものに対する絶対的な信頼は、社会主義建設のすべての戦線において飛躍的な前進発展を成し遂げるための確固たる担保である」と強調する。ここでは、また、「我が人民において、自分のもの、我々のものとは、偉大な首領の賢明な領導の下で革命闘争と建設事業を進めて成し遂げた思想精神的及び物質的財富である」と説明して、信頼の対象が既存の制度全般であることを確認している。

 注目されるのは、次のように、そうした自信感を特に幹部に求めていることである。

 「我が地において我々のものをもってできないことはないとの自信感を帯びることは誰にとっても重要であるが、特に革命の指揮メンバーである幹部においてより重要である。幹部が信念を失い動揺すれば、部門と単位が座り込むようになり、更には我々が理想とする強国建設の前進速度が遅くなる」

 また、「幹部が党中央の志を徹底した行動実践で奉じていくとき、人民の福利増進のための成功の総計を一つ一つ積み重ねていくことができる」として、そうした「自信感」が金正恩に対する信頼と一体的なものであることを明示している。

 もちろん、そうした「自信感」は、幹部だけでなく、一般大衆の動員にも不可欠なものととらえられており、「我が党、我が国家、我が制度が第一であるとの無限の自矜心は、千万人民の精神力を総爆発させることになる根本担保である」と主張されている。

 そして、最後に「すべての幹部と党員と勤労者は、我が地において我々のものをもってできないことはないとの胆力と自信感をもって、我々式社会主義建設の全面的復興、全面的発展を力強く推し進めていかなければならない」と訴えている。

 同評論のこうした論旨からは、既存の体制・制度及び金正恩の方針・政策に対する不信感が一般大衆のみならず幹部にまで根強く蔓延し、それが企業等の運営あるいは日々の生産活動などへの積極的参画を妨げているという状況がうかがえる。とりわけ、「幹部が信念を失い動揺」との表現は、それが現実に生じていることを反映していると思われる。

 そうした状況の改善には、こうした空虚な宣伝では足りず、やはり現実的・可視的な成果が必要であろう。言うまでもないが、金正恩が「人民生活」向上を繰り返し力説するのもそのためであろう。