rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年2月15日 第2回建設部門幹部大講習が閉幕(加筆版)

 

 本日の「労働新聞」は、2月8日から1週間にわたり、「『主体建築の飛躍的発展と建設の大繁栄期』との主題で行われた」標記会合が14日閉幕した旨を伝える記事を掲載した。同会合に関するこれまでの報道を整理すると概ね次のとおりである。

8日:開幕:参加者は「中央と地方、武力機関の建築設計、施工、建材生産、建設監督、国土環境保護、都市経営部門の幹部、建設科学研究及び教育機関幹部、内閣と省・中央機関党、行政責任幹部」。まず、金正恩書簡(内容後述)を呉守容党秘書が伝達後、金徳訓総理の建設部門事業総括報告に続き討論。

9日:前日に続けて討論の後、金徳訓総理が建設部門事業総括会議を結束(締めくくり)。

その後、「党及び国家表彰授与式」を実施。各種勲章など授与。更に、「新たな建設革命遂行において指針とみなすべき問題を正確に認識するための実務講習」を実施。

10,11日:実務講習継続。「まず、建設部門における革新的な変化で社会主義建設の全般的発展をけん引しようとする党中央の意図と建設事業において堅持すべき基本方向と基本要求、具体的な課題と実践方途を正確に認識するための学習を実施」(講師名未報道)。続けて、呉守容党秘書、国家設計総局総局長(以下氏名略)、電力工業省副相、首都建設委員会委員長、都市経営相、党中央委副部長、平壌建築大学緑色環境技術交流所所長、国家非常災害委員会委員長、建設建材工業相、国家建設監督相」が講演を行ったとされる。

12、13日:期日の特定はないが、14日掲載の記事で平壌市内各所を訪問と報道。訪問先として報じられたのは、万景台(金日成生家)、朝鮮革命博物館、科学技術殿堂、普通江江岸楼閣式住宅区と松新、松化地区(第1期1万世帯住宅建設現場)。

14日:金正恩総書記に捧げる宣誓文の採択後閉幕。

 金正恩の書簡は、「新たな建設革命で我々式社会主義の文明発展を先導していこう」と題した長文で(朝鮮中央テレビでそれをすべて読み上げた番組の放送時間は約60分)、建設についての基本的理念や方針にとどまらず、関連部門の課題に至るまで包括的に言及したものである。

 冒頭で三池淵市整備をはじめとしたこれまでの建設部門の成果をあげ、関係者への謝意などを述べた上で、「至急正すべき欠陥もあり、補強すべき側面も少なくない」として、設計、建設工法、仕上げ建材の輸入依存度などにおける不足点を具体的に指摘している。更に、「より重要な問題」として、「建設部門の幹部が我が党の建築理念と建設政策、我々式社会主義の発展において建設分野を重視する党中央の意図を深く感得できず、建設において世界に先駆けることのできる視野と眼目が狭小であること」をあげている。もちろん、「建設部門の物質技術的土台」がそうした構想を支える上で不十分であることも「必ず解決すべき懸案」としている。

 今後の構想として、「我が党は、今後20~30年を期限として、全国人民の生活環境を根本的に改変させ、我が国を世界が羨望する社会主義理想国として・・建設する壮大な設計図を広げ、建設部門は、この目標を現実に転換させる上で最前線の位置にいます」としている。

 また、建設の持つ政治的意義について、「建設は、人民をして我が党の人民大衆第一主義政治と我が制度のありがたさを肺腑で感じさせ、・・誰もが偉大な国家の一員となった矜持とより良い明日に対する信念にあふれて社会主義愛国偉業に献身するように鼓舞する重要な政治的事業です」と説明している。

 その上で、建設事業の「基本方向は、人民の福利増進のための対象建設に優先的な力を注ぎつつ、経済土台を強化するための産業建設と国土建設を同時に推進すること」とし、とりわけ、「住宅問題は、我が人民が最も関心を払う問題であり、社会主義制度の恵沢を直接肺腑で感じさせる上で一次的な問題」と述べて住宅建設重視の姿勢を改めて示し、「5か年計画期間に全国的範囲で不足する住宅問題を基本的に解決しなければなりません」との目標まで示している。

 更に、「建設事業において一貫して堅持すべき基本要求」の第一として、「建設事業に対する党中央の唯一的領導体系を徹底して立てること」をあげ、「建設事業において提起される問題を党に適時に報告し、結論にしたがって執行することを鉄則」とし、「ただ党で批准した形成案のとおりにのみ建設し、党の結論も受けずに建設を執行するかの非正常的な現象を絶対に許容しない」ことを求めている。その第二は、「建築を徹底して政治化、政策化すること」、例えば、「建築物に政治的なスローガンや標語を掲示すること」などである。第三は、「労働党時代を代表し象徴することのできる新たな独特の建築様式を創造し、発展させること」であり、「我々の固有の味と特色を生かしつつ、現代建築術の諸般要求を我々式に具現していく」ことなどを求めている。第四は、「経済性と実用性を高い水準で保障すること」であり、「資源、敷地、エネルギー節約型建設を積極的に奨励」するとしている。

 以上を総論的部分とすると、後段は各論的部分で、設計に関する様々な要求をはじめとして、「園林(庭園)緑化」、「建設総計画」の作成、「施工」の質確保、セメントをはじめとした建設資材の生産、建設力量の育成強化、建設(設計、施工など)の科学化、現代化(「人海戦術」を批判)、建設監督事業の厳格化、徹底、などについて、具体的な課題を提起している。

 その上で、改めて「地方建設、特に農村建設について再度強調」するとして、「(今次)大講習の重要な目的の一つがまさに地方の建築設計力量を強化」することであったとして、「地方の建築設計と施工力量」の整備強化を訴え、「市・郡建設旅団」の編成や地方における「仕上げ建材生産基地」設置などを訴えている。

 そして、最後に、「建設部門幹部と建設者の責任制と役割」の向上、「軍民協同作戦」の展開、「党組織」の役割強化(「労働安全」促進含む)などの要求を列挙している。

 以上の中でもとりわけ詳細な言及があったのが設計についてで、金正恩の強い思い入れがうかがわれた。彼がなぜ、これほど建設、とりわけそのデザインに熱を入れるのかは、個人的趣向の問題もあろうが、冒頭部分で彼自身が述べているような、建築の持つ政治的効果(下線部)を重視しているからであろう。

以下の部分加筆

 言うまでもないことかもしれないが、補足しておくと、前述の「党中央の唯一的領導体系」に関して強調された党の「方針」であるとか「批准」というのは、端的に言えば、金正恩自身の裁可という意味であろう。

 なお、実務講習講師のうち、党中央委副部長は、「楊明哲(音訳)」であり、何部の副部長なのか判然としないが、過去、三池淵市の党委員会委員長(現在の責任秘書)を務めていた人物と名前が一致する。推測するに、同市整備の功績を買われて党中央における建設関係の業務を任されているではないだろうか。

 そういえば、以前は、金正恩の建設関係の現地指導にしばしば同行するなどした国務委員会設計局の馬遠春局長は、今次「大講習」を含め最近出番がないようだが、どうしているのか。健在であれば、役職柄、何がしかの出番があってしかるべきと思うのだが、金正恩の信任を失ったのだろうか。また、同設計局自体も、国家設計総局なるものが存在する以上、果たしていまだに存在しているのかも疑問と言わざるを得ない。