rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年12月15日 最高人民会議常任委員会第14期第18回全員会議を開催

 

 本日の「労働新聞」は、標記会議が14日、崔竜海委員長の「司会」により開催されたことを報じる朝鮮中央通信の記事を掲載した。

 同記事及び別途に掲載された同会議の「決定」、「公示」などによると、同会議における決定事項の主な内容は、次のとおりである。

  • 最高人民会議第14期第6回会議を来年2月6日に召集。同会議の議題は次のとおり。
    • 「内閣の2021年事業状況と2022年課題に関する問題
    • 2021年国家予算執行の決算と2022年国家予算に関する問題
    • 「育児法」、「海外同胞権益擁護法」の採択と関連した問題
  • 法令採択
    • 「沿海及び江河川運輸法」:「船舶輸送と埠頭建設、船舶航路管理などを現代化、情報化、科学化し、これに対する指導統制を強化する」ことなどを規定
    • 「建設設計法」:「国家の建設政策に即して建設設計の作成と審議、承認を経済建設と人民生活向上に貢献できるよう正しく行い、設計の科学化水準を高めるための法的要求を反映」
    • 「財産執行法」:「財産に対する判決、判定、裁決、決定の執行における制度と秩序を立てて機関、企業所、団体と公民の民事上権利と利益を保障」し、「財産執行申請と執行文発給、手続きと方法、法的責任に関する問題を具体的に明示」

 このうち、最高人民会議の開催は、9月28日から開催された第5回会議に継ぐものとなる。なお、内閣の活動報告や国家予算の策定などは、従前は3月ないし4月ころに開催の会議で行われるのが通例であったが、今年は党大会開催の影響もあり、その閉幕直後の1月17日から開催の第4回会議において行わた。来年は、それを2月初頭に行うということである。

 そこで審議予定とされる「海外同胞権益擁護法」については、在日朝鮮人の権益問題が含まれることが想定できる。その場合、日本政府の施策との絡みが浮上し、その対応によっては膠着中の日朝関係が動き出す一つの契機となる可能性も想定できよう。「育児法」は、金正恩の先の児童への乳製品供給指示などに代表される人民生活向上策の一つとして制定されるのであろう。

 一方、今次常任会議で採択された法令のうち、「建築設計法」は、先の金正恩の三池淵市現地指導の際に示された地方における建築力量強化の方針なども反映しているのではないだろうか。また、「財産執行法」は、日本で言えば民事執行法に相当するものと思われるが、そうした法令の整備が必要となる経済状況が生じていることをうかがわせるもので、あるいは私的経済活動の拡散とも関連するとも考えられる。現実にどのような状況で、こうした「財産執行」が行われるのか興味深い。