rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年2月20日 蓮浦野菜温室農場建設着工式(補論)

 

 標記着工式の状況は、昨日のブログで紹介したところだが、今日になって、朝鮮中央放送が報じた映像番組を見たので、それを通じて確認できた点、感じた点などをいくつか紹介したい。

 まず、出席軍高官についてであるが、金正官は、同着工式の司会進行役を務め、階級章は星3つ(上将)をつけていた。同人は、昨年、国防相及び国務委員から解任され、階級も次帥から大将、上将へと2階級降格させられたわけだが、その後も完全に粛清されたわけではなく、上将にとどまっていることが確認できたわけである。おそらく同建設工事に従事する軍部隊全体を総括する立場に就いているのではないだろうか。

 金明植海軍司令官は、星2つ(中将)の階級章をつけ、金正官の次位にいた。

 金光革は、陸軍の制服で星2つ(中将)の階級章を付けていた。なお、同人が中央委員に補選されたのは、昨年12月の中央委8-4全員会議であり、このとき、軍団長クラスの軍人相当数が中央委員から候補委員に降格されたことを勘案すると、同人は、軍の中で軍団長ないしそれ以上の地位にあると思われる。

 金明植と金光革の二人は、式典終了後に金正恩が参加者隊列に接近した際、その最前列にいた参加部隊の責任者らしき海軍及び陸軍軍人若干名をそれぞれ金正恩に紹介していた。したがって、金光革は、現地陸軍部隊の総括責任者的役割を果たすのではないだろうか。

 出席者全体については、数えきれないほどで、1万人を超えるのではないかとも思われる。その約3~4割程度が海軍の制服であり、今次工事では、海軍が重要な役割を果たすことがうかがえる。金明植が自ら討論を行ったのもそのためであろう。

 最後に、労働新聞等に掲載された、金正恩が車両のサンルーフを開けて密集する軍人らに手を振っている写真の場面であるが、その前後の動画を見ると、意図せずしてああした状況が生じてしまったようにも思える。そのことは、この前の段階で、多数の警護要員とみられる私服姿の人々が遠くから駆けつけてきて、金正恩が乗った車両に群がる軍人らを必死に制止しようとしている場面が写されているからである(この段階では、車両の屋根は開いていない)。また、サンルーフから身を乗り出した金正恩も、写真では手を振って歓呼に応えているように見えるが、動画では、そうした動作と共に、道を開けるよう追い払うような仕草を繰り返しているようにみえる。少なくとも間違いないことは、金正恩の車両が軍人の群れの中に入っていったのではなく、本来の整列位置からはかなり離れた退出動線に軍人が群がってきて、ああした状況が生まれたということである。

 こうした状況の出現をどう解釈すべきかについては、悩ましいところがある。一面では、軍人の中での金正恩に対する欽慕の情が非常に強いということの表れとも言えるし、軍の統制がしっかりとれていない(隊列を勝手に乱している)ということの表れともいえよう。それを敢えて放映したのであるから、北朝鮮当局としては、後者を措いても、前者を強調したいのであろうが、警護担当者は肝を冷やしたのではないだろうか。