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主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年12月1日 「航空節」に際し、「大規模飛行総戦闘出撃作戦」関係者を顕彰

 

 本日の「労働新聞」は、「航空節」(11月29日)に際し、先般、米韓の合同空中訓練に対抗して実施した「「大規模飛行総戦闘出撃作戦」に貢献した空軍指揮官及び飛行士を顕彰するため、①党中央庁舎において、金正恩との記念写真を撮影、②金正恩の祝賀文伝達等のための集会を開催したことを伝える記事をそれぞれ掲載した。

 このうち、①に関する記事によると、対象となったのは、「11月4日、3時間47分に及び各種戦闘機500台を動員した空軍飛行隊の総戦闘出動作戦に直接参加した5個師団20余個連隊の飛行士705名」とされる。金正恩は、この席で、「無敵の空中神話は、何かの先端戦闘機ではなく、不屈の精神で武装した飛行士が創造する」とした上で、「(当該作戦行動で)祖国の領空を決死守護した人民空軍の赫赫たる武勲は祖国青史の事変的大勝として長く輝くであろう」と、その功労を称えるとともに、今後とも「国防力強化と国家の自尊死守、国威宣揚を頼もしく担保」するよう激励したとされる。なお、撮影の日付は明らかにされていない。

 また、②に関する記事によると、11月28、29日の両日、平壌で「航空節記念行事」が実施されるなかで、「敬愛する金正恩同志が送って下さった祝賀文を伝達し(作戦に参加した)空軍指揮官と戦闘飛行士に軍事称号と国家表彰を授与する集会」が開催され(期日不詳)、朴正天党秘書、李永吉国防相、鄭慶沢総政治局長、李泰摂参謀総長ら軍高官が参加したという。

 金正恩の「祝賀文」は、「2022年は我が人民空軍の年、空軍勝利の年であると堂々と言える」と主張し、「(当該作戦行動などを通じて)敵の無謀な軍事的企図を断固として制圧し、空軍の戦争遂行能力と意志を余すところなく誇示したことについて高く評価」したとされる。

 更に同集会では、参加者の軍事称号を昇格させる党中央軍事委員会委員長命令が伝達され1階級高い軍事称号と将領礼服が授与されるとともに、最高人民会議常任委員会政令が伝達され金光赫(空軍司令官)に共和国英雄称号及び金星メダルと国旗勲章第1級が授与されたのをはじめとして、他の参加者にも勲章とメダルが授与された。

 このほか同集会では、「決意討論」及び「敬愛する金正恩同志に捧げる宣誓文」の採択などが行われた。

 同集会参加者のためには、このほか、国防省協奏団、海軍協奏団、空軍協奏団による合同公演や「盛大な宴会」も行われたという。

 金正恩による空軍飛行士との記念写真撮影は、10月9日に「大規模空中演習」参加者と行ったのに継ぐものであるが、今次は、軍事称号(階級)の昇格や礼服の授与、国家表彰の授与なども付け加えており、11月4日の「作戦」の偉大性をそれだけ印象付けたいとの思惑がうかがえる。そのことは、上掲の一連の記事の中でも、同「作戦」により米韓側を圧倒した旨を繰り返し強調していることにも示されている。

 今になってこうした演出を改めて実施したのは、同作戦について報じられた際にも指摘したことだが、それだけ「敵優勢論」の影響が深刻であり、その払拭の必要性がいまだ残存していることを示しているとも考えられる。そのことは、金正恩が「先端戦闘機」の効用を殊更否定していることからうかがえるところである。