rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年3月1日 評論「今年に特別に重視必ず良い結果を成し遂げるべき事業」(3月2日記)

 

 標記評論は、「党中央委員会第8期第4回全員会議の思想を深く体得しよう」とのサブタイトルを付して掲載されたもので、同会議が提起した今年の取組課題として、「農事と人民の住宅建設」の緊要性を訴えるものである。

 評論が掲げるその第一の理由は、「すべての人民に社会主義勝利に対する信念を深く植え付けるため」である。農事と住宅建設がなぜそうした効果を発揮するかと言えば、「人々は自分たちに及ぶ人民的施策を通じて我々式社会主義の優越性と生活力(実効性の意)、我が国家の無尽莫大な力について実感するようになり、社会主義の勝利の必然性を確信し、自ら社会主義偉業のすべてを皆捧げていく決心を固めるようになる」のであり、「農事と住宅問題は我が人民が一番関心を寄せる問題であり、党と国家のありがたさを直接、肺腑で感じるようにする事業」であるからである。ここで、「農事」は、食料問題と同義と考えてよいであろう。

 第二の理由は、「人民生活向上における実際的な変化、実質的な成果によって、我々式社会主義の全面的発展期を力強く切り開いていくため」である。どうしてそうなるかと言えば、「人々は生活がより潤沢になり文明になるほど、新たな信念と勇気を抱いてより高い理想と抱負を打ち立て、(自分が所属する)単位発展、国家発展のため奮闘していく」というのである。したがって、「我々式社会主義を全面的発展段階へと確固として移行させようとするなら、いかなる対価を払っても今年に農事と人民の住宅建設において必ず良い結実を成し遂げなければならない」という。要するに、生活を安定充実させることが勤労意欲や創造性発揮につながるという発想であろう(実際にそうなるかは疑問。生活が安定すれば、現状に満足してしまうおそれもあるのではないか)。

 評論は、最後に、農業と建設部門関係者に対し、各部門での成果をあげることにより、「全国に労働党万歳の声、社会主義万歳の声がより高く轟き渡るようにする上で積極的に貢献」することを訴えている。

 北朝鮮の今年の重点が農業と住宅建設であることは、先般来の金正恩の動向や公式報道の内容などからも明らかであるが、同評論は、指導部がそこに重点を置いた理由を率直に明らかにしたものといえよう。要するに、人民の体制に対する信任をつなぎ留め、勤労意欲を引き出すことが狙いなのである。換言すると、現状のままでは、それが期待できなくなっている、「労働党万歳の声」は、今は聞こえないということであろう。