2022年7月14日 評論「思想論を堅持して進めば撃破できない難関はない」
標記評論は、現下の厳しい情勢における思想論、すなわち心の持ち方の重要性を主張したもの。そこで求められる具体的な思想の内容として、3点を挙げている。
第一は、「必勝の信念をより固く堅持する」ことである。中でも「敬愛する金正恩同志がいらっしゃるから我々は必ず勝利するとの岩のような不変の信念」の重要性を強調する。
第二は、「自力更生の精神をフル充填する」ことである。「自力更生が決して、今日直面している難関を克服するための戦術的な対応策ではなく、我が党の確固不動たる政治路線であるということを骨に刻まなければなあない」として、その徹底を訴えている。
第三は、「集団主義威力を総爆発させる」ことである。ここで「集団主義」とは、「誰もが家事よりも国事を先に考え、個人の利益よりも社会と集団の利益を貴重なものとみなす確固たる観点を帯び」、「あい路と難関にぶつかるたびに互いに助けあい、学びあい、力を合わせて集団的革新、連帯的革新を起こし進んでいくことによって、落伍した単位、落伍した人がなく皆一緒に発展し、皆一緒に前進」していくことである。
その上で、最後に「全党が実質的な思想事業を行おう」として、「思想事業を党委員会的な事業として確固として転換させること」、すなわち、担当者まかせにせず、党委員会全体の協力により進めることを訴えている。
以上のような主張の一つ一つは特段目新しいものではなく、むしろ、かねて繰り返されてきたものであるが、現下の苦境打開の要諦として、こうした形でそれらが列挙されたことは、北朝鮮指導部が進めようとしている方向性を改めて確認させるものともいえよう。
とりわけ、3点目の主張は、「各自が生産しただけ受け取る」という「社会主義的分配原則」を超えた、いわば共産主義的な発想に基づくものともいえよう。それは、さしあたっては、コロナ蔓延、大雨被害などの現下の非常事態における相互扶助を念頭においたものであろうが、やや中期的に見ると、経済運営における市場経済的要素の活用に否定的・消極的影響を及ぼすことになるのではないだろうか。
いずれにせよ、こうした「思想論」に状況打開の鍵を求めるところに北朝鮮の置かれた状況の厳しさがうかがわれるし、更に言えば、こうした主張の背景には、そこで主張されている考え方(金正恩に対する信頼、自力更生、集団主義など)に対する信念の動揺あるいは疑念の拡散といった現象が存在するのかもしれない。