rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年7月18日 政論「無敵の力を千百倍に固めよう」

 

 標記政論は、朝鮮戦争を回顧し、その被害の深刻さを強調しつつ、そうした被害を再び受けないための国力強化の必要性を訴えたものである。

 そのため、まず、「戦争は人民において不幸であり、苦痛であり、痛みであり、傷口である」と戦争の悲惨さを強調した上で、「我々が今のように強かったならば、多数の人々に苦痛と不幸を強要した怨恨の6・25(朝鮮戦争)はなかったはずだ」と主張する。

 そして、現状については、このところの軍事開発の進展などを挙げて「我々は強くなった」としつつも、「しかし、我々は、より強くならなければならない」と主張し、「帝国主義がある限り!」と続ける。「帝国主義が残っており、我々の尊厳と自主権を毀損しようとする敵対勢力が残っている限り、自分の力を絶え間なく強化しようとする我々の闘争の進軍路には絶対に休止符も終止符もありえない」というのがその理由である。

 こうした主張は、2018年4月、国家核武力の完成を前提に経済建設への力量集中を訴えた当時の発想とは、明らかに異なるものである。

 ただし、更に注目されるのは、「強くなる」ことの意味について、「我々の不敗の力の核は昨日も今日も政治思想的威力である」として、専ら、統一団結や自力更生精神などの強化を訴える一方、国防力強化の必要性については、ほとんど具体的な言及がないことである。

 同政論の直接的狙いが何かは判然としないが、基調としては、国防力の継続的(あるいは永続的)強化の必要性を主張しつつも、その前提となる核心的課題としては、国内の意思統一の重要性を主張しているように思える。そして、そうした統一の中心として金正恩が想定されていることはいうまでもない。

 そう考えると、同政論も、昨日付けの社説と、題材は違えど最終的に目指すところは同じともいえる。やや牽強付会な見方かもしれないが、今日の北朝鮮の喫緊の課題は「思想」問題にあるように思えてならない。