rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年7月20日 社説「戦勝世代の偉大な英雄精神で社会主義建設の活路を力強く開いていこう」

 

 標記社説は、現在直面する苦境打開の鍵として、朝鮮戦争を勝ち抜き戦後復興を成し遂げた戦勝世代の「英雄精神」を継承することを訴えるものである。

 社説は、まず、その「英雄精神」の持つ意味(効用?)を説明している。第一に挙げられるのは、「首領に対する絶対的な信頼と決死貫徹の意志を百倍してくれる根本源泉である」ことである。第二に「主体的力をくまなく強化し、その威力で絶え間なく奇跡と変革をもたらす」ことである。これに関しては、「自力更生、堅忍不抜の意志を抱いて歴史の奇跡を抱いてきた英雄世代の精神を受け継ぐ子孫は、絶対に苦境の前に躊躇したり他人の力に期待したりしない」と主張している。第三に、「全社会に革命的同志愛と義理、美徳と美風をよりはっきりと花咲かせる滋養分」であるという。

 社説は、「戦勝世代の英雄精神」を以上のように説明した上で、「1950年代の偉大な革命世代の崇高な精神世界に自らを照らしあわせ、生の瞬間瞬間を価値ある偉勲と献身で輝かせていく」ことを訴え、とりわけ、党員に対しては、その先頭に立つべきことを求めている。また、「青年たちは、1950年代(の)祖国守護精神を貴重な遺産として受け止め、祖国保衛に青春を捧げることを大きな矜持として、またとない栄誉として堅持しなければならない」とも主張している。

 概して新味のない主張ではあるが、ここでも、先般来紹介してきた様々な論調と同様、「首領に対する絶対的な信頼」の確立が一番の課題として強調されていることを指摘せざるをえない。また、青年に対して、「戦勝世代」の精神の継承を求めるのは分かるが、そこで「祖国保衛」についてだけ殊更強調しているのが若干気になる。それだけ、兵役忌避のムードが蔓延しているということであろうか。

 もう一つ気になるのは、「他人の力に期待」することを戒めていることである。いまだに「他人」に期待する声があるのだろうか、あるとすれば、中国だろうか。そうだとすると、ここでも、中国との関係の微妙さが垣間見られるといえよう。