rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2022年9月19日 社説「すべての力を総動員して今年の農事を成果的に結束しよう」

 

 標記社説は、秋の収穫シーズンを迎えるに際し、それへの取り組み強化を訴えるもの。

 冒頭で、コロナ蔓延下での田植え、自然災害への対応など今年のこれまでの労苦を回顧した上で、「一歩一歩奮闘して準備した作況がそのまま良い結実へと続くか否かということは、全面的に秋収穫(稲刈り)と脱穀結果に掛かっている」として、「(そうした)今年の農事結束をしっかり行うことは、我が党の尊厳と権威を決死擁護するための重要な政治的事業」であり、「今、我々において稲刈りよりもっと重要で緊迫した課題はない」として、今後の取り組みの重要性を最大限強調している。

 そして、そのための具体的方策としては、「農事結束をしっかり行う上での基本は、稲刈りと脱穀を適期に早急に進めることである」として、時期を逸しないよう戒めている。

 次に、「全国人民が奮い立って農村支援雰囲気をより高潮させなければならない」とも訴え、農業分野に対する他の産業分野の支援(例えば円滑な電力供給など)を督励している。

 本日の「労働新聞」は、同社説以外にも農業関連の記事を多数掲載し、食糧増産のための奮起を促している。こうした報道ぶりについて、韓国・連合通信は、これまでのところ予測される作況が芳しくないことを反映したものとの見方を示している。

 これとは別に、北朝鮮国内で最近、コメの市場価格が上昇気味であるとして、それを国内で不作予想が拡散していることを裏付けるものと意味づける報道もある(SPNソウル平壌ニュース本日記事)。

 こうした見方は、社説も指摘しているとおり、北朝鮮農業をめぐるこれまでの状況が厳しいものであったことを勘案すると、必ずしも先入観に基づく決めつけとは断言できないが、他方、社説の「(現在までの)作況がそのまま良い結実へと続くか否か」との表現からは、少なくともこれまでのところ、今年の食糧生産は、さほど悲観的なものではないとの認識がうかがわれる。そうした表現が、人々に今後の取り組み意欲を喪失させないための敢えての楽観姿勢の誇示なのか、実際の現状認識の反映なのか、慎重に見極める必要があろう。

 個人的には、後者の可能性も十分ありうると思われる。農業の進捗状況に対する楽観的見方は、これまでも比較的一貫して示されており、また、自然災害と言っても、これまでのところ、かつてのような大災害は特段発生してない模様だからである。結果として(今後、特別の事変が起きない限り)、「豊作」とはいかないまでも、「平年作」程度に落ち着く可能性も否定できないように思われる。