rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2023年12月29日 全員会議3日目状況を報道

 

 本日の「労働新聞」は、全員会議の3日目にあたる28日の進行状況を簡略に報じる記事を掲載した。その骨子は、次のとおりである。

  • 第2議案「社会主義的施策の実行において軽工業部門が責任感を高めることに関する問題」:金正恩が「報告」、「全国の全ての児童・生徒・学生に良質の制服とかばん、履物を供給」することについて、「新たな革新を起こすための課題と実行方途を具体的に提起」
  • 第3議案「党中央検査委員会の2023年度活動状況に対する報告」:「報告を聴取」とのみ記述。報告者、報告内容等何ら言及なし
  • 第4議案「2023年度国家予算執行状況と2024年度国家予算案」:「討議」を経て、「国家予算審議組」を構成(討議内容等には一切言及なし)
  • 第5議案「現時期、党の指導的機能を強化するための一連の措置」:「報告」を経て「当該の決定書が全員賛成で採択」(「報告」者、その内容、討論等については一切言及なし)
  • 第6議案:「組織問題」(審議状況、結果については一切言及なし)
  • 「総会の決定書草案に対して研究および協議会を行う部門別分科が組織」

 同日審議された議案のうち、第2議案は、これまでに審議されてきた第1議案の本年度総括と来年度方針の中で、児童・学生向け制服・学用品供給問題を特別に取り上げ、その徹底を図るものといえる。議案の表現からして、これまでの取り組みに対する批判・叱責の趣旨が強いものと考えられる。金正恩の「人民大衆第一主義」の目玉の一つである「育児政策」の加速、アピールを目指したものといえよう。

 それ以下の議案については、いずれも上述のとおり具体的な内容をうかがわせる記述はない。会議終了後の全般的な報道においてある程度、示されることになろう。

 会議冒頭で議案は6個と決定されているので、以前に予告されていた偵察衛星打ち上げや農業機械生産などに関する計画は、独立の議案としては上程されないものとみられる。おそらく、第1議案の中に含まれているのであろう。これも、具体的内容は、最終日の報道待ちということになる。

 いずれにせよ、4日目以降は、昨日の本ブログで予測したとおり、分科形式での協議に入るのであろう。恒例によると、そこでの協議結果を政治局会議を開催して集約・審議の上、最終日の全体会議で決定書採択という運びになる。

 なお、初日以来、主席檀の中に李日換秘書(政治局委員、宣伝扇動担当)の姿が見えない。従前の序列からすると当然、そこにいるべきなのにいないのは何故なのか気になる。一方。李炳哲(中央軍事委副委員長)は、重要行事にしばしば姿を現さないことがあるが、今次会議では、しっかり主席檀最前列に着席している。ただ、常務委員であるかは、微妙な印象がある。というのは、朝鮮中央放送が報じた同会議初日に関するニュース映像で、会議開幕に先立ち金徳訓、趙勇元、崔竜海が会議場前で車から降車する様子が写されているのに対し、李炳哲についてはそうした映像がないからである。

 同ニュース画面に関して更に言うと、趙勇元、李炳哲、呉守容、金在龍、朴泰城の5人が金正恩が本部庁舎の玄関から出てくるのを出迎え、一緒に会議場に向かう場面がある。金徳訓、崔竜海の姿はそこにはない。党秘書というのが基準なのかもしれないが、序列とは別の、側近とそうでない人物の壁を感じる。ただし、2日目のニュース映像では、金正恩が前述5人に加え崔竜海も一緒に引き連れて庁舎玄関から出てくる形になっている。逆に、金徳訓については、単独での入場シーンがあり、別格の扱いとなっている。これも余談だが、過日の竣工式での同人の発言を報道する際、「総理同志は・・・」といった表現が用いられていた。こうした場合、通例では「演説者は・・・」との表現が用いられるところであり、同人に対する別格扱いがここでもうかがえる。同人の地位については、夏の干拓地浸水事件に関連して金正恩から名指し批判を受け、首の皮1枚で延命したのかと思っていたが、むしろ、反対の方向に進んでいるようであり、誠に不思議としかいいようがない。