rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月26日 各種展示会の開催(11月27日加筆修正)

 

 11月26日付けで、同月25日から29日までの予定で二つの展示会が開催されていることが報じられた。

 一つ目は、科学技術殿堂で開催の全国保健部門科学技術成果展示会で、「医薬品、医療器具の国産化」をテーマとしており、関連部門240余単位から2,500件の医学科学研究成果が展示されているという。

 二つ目は、平壌駅前百貨店で開催された全国酒及び基礎食品展示会で、各地の食料品生産単位が提出した1万6千余件の酒及び基礎食品が展示されているとという。ちなみに、基礎食品とは、主に味噌・醤油などを指すと思われる。

 更に27日付けで、26日から29日までの日程で、人民大学習堂において、全国農業部門技術経験発表及び科学研究成果展示会が開催されていることが報じられた。そこでは、農業科学研究機関と各地農業大学、農業指導機関、生産単位における1千余件の科学研究成果と数百件の技術経験が発表され、また、4百余種、1千6百余点の新たな農作物種子、獣医薬品などが展示されるという。

 本ブログでもこれまでにいくつか紹介してきたところだが、北朝鮮では、このところ同様の展示会がまさに踵を接するように次々と開催されている。これら展示会の開催は、北朝鮮指導部が住民生活の質の向上に並々ならぬ力を注いでおり、かつそれが一定の成果をあげつつあることを改めてうかがわせるものといえよう。

 とりわけ、酒・基礎食品の展示会は、北朝鮮の食生活上の問題意識が、絶対的な「量」の確保からより多様な嗜好品などに移ってきていることを如実に示すものと言えるのではないか。

 繰り返しの主張になるが、25日に紹介した金正恩の最前線島嶼部隊視察に関連して、韓国では、同人の先般来の「戦闘飛行術競技大会参観」(16日報道)や「(落下傘)降下訓練視察」(18日報道)などに続くものとみなし、「年内」とした米国との交渉期限切れを目前に韓国に圧力をかけ、それをさらに米国に及ぼそうとする狙いが込められているなどとまことしやかに論じているが、そのような見方は、韓国人の関心を中心にした勝手な解釈としか思えない。

 前掲の「戦闘飛行術競技大会」にしても、正確に言えば「航空・反航空軍指揮員たちの戦闘飛行術競技大会」であり、「師団長組、追撃機連隊長組、軽飛行機連隊長組に分けて・・・飛行指揮メンバーの編隊指揮によって目標に対する爆撃飛行と射撃飛行を行う方法」で行われている。純粋な実戦指向というよりも、むしろ高級幹部にも現場を体験させようと言う金正恩流の幹部政策が色濃く反映された演習とみるべきではないだろうか。島嶼部隊視察の主な関心が軍人の生活状況にあることは先に述べたとおりである。

 米朝交渉の「期限」についても、外交関係者の対外的発言はいざしらず、国内報道・論調などでは、ほとんど言及されていない。いわんや、それに向けて国内の引締めを図ろうとするような動きは求められない。

 むしろ、国内的に目に付くのは、まさに上述のような住民生活の向上に向けた、あるいはそれを実感させるための各種の取組みである。

 言うまでもないことだが、北朝鮮指導部の意図は、こういった様々な動向を総合的に勘案した上で判断すべきである。上記のような「韓国流分析」は、そのような視野を欠いたまま、自分勝手な妄想を作り上げ、自らそれにおびえて「挑発」だの「圧迫」だのと騒ぎ立てるという、極めて非生産的な所為としか思えない。

 そもそも、北朝鮮は、今や対米交渉において韓国の役割に何らかの期待をかけているようにも見えないし、一方、トランプ政権も、仮に韓国が北朝鮮から何らかの圧力を受けたからといって、それを理由に対北朝鮮姿勢を変化(軟化)させるとも思われない、というのが客観的な判断であろう。