rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月10日 論説「我が党の2019年革命実録は祖国青史に永く輝くであろう」

 

 標記論説は、今年の出来事を回顧し、総括したものといえる。その構成は、前半にいかなる意味で輝かしいものであったのかを説明し、後半でそこから得られえる教訓は何かを論じるものとなっている。

 前半は、総論として「金正恩同志の特出した領導力が最上の境地で誇示された意義深い年」とした上で、各論として、①「透徹した自主精神で一貫した聖なる歴史」、②「我々式社会主義の前進速度を一層加速化させた誇らしい闘争航路」、③「人民に対する最も熱烈な愛で編まれた不滅の英雄叙事詩」の三つの側面をあげている。それらは、主に、①は外交面での自主性堅持を、②は内政面での経済建設の成果を、③は、それらの成果が人民のためになされたものであることを、指している。

 後半では、そのような偉大な業績、勝利の結果として、「我が人民に党の思想と路線は科に学であり、勝利であるということを再度刻み込んで」おり、あわせて、「科学技術を繁栄の宝剣として堅持していく人民は必ず世界を圧倒していくことができるということが2019年の重要な結論」として示されたことをあげている。 

 韓国の報道では、前半①の中で、対米交渉において原則的姿勢を堅持したことへの言及などがあることを捉えて、この論説を今後の強硬姿勢を示唆するものとする見方もあるようだが、そこまでの含意があるのかは疑問である。②、③と併記して記述されていることからすると、既存の政策の枠内で包括的・原理的な主張を展開したにとどまると見るのが妥当ではないだろうか。

 むしろ私がこの論説に関し注目したいのは、前半の③と後半の後段部分である。前半のうち、①と②は、いわば対をなすもので、通例的にはそれですべてを網羅するものと考えられるところ、敢えて③を付加したところに、それを印象付けたいとの狙いがうかがえる。また、後半について言えば、前段の「党の思想と路線」はいわば決まり文句であり、それに並列させる形で、後段の「科学技術」が掲げられているところに、「科学技術」の力で苦境を突破したいとの強い思いが込められているように感じられる。