rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月27日 社説「社会主義憲法を徹底して具現し我々の国家社会制度を一層強化発展させよう」

 

 12月27日は、「社会主義憲法節」とされていて、これは、1972年の同日に社会主義憲法が制定されたことにちなむものである。標記社説は、それに際してのものである。ただし、その「社会主義憲法」は、金正恩時代に入った後の2016年6月の改正において、同人が提唱した「金日成金正日主義」を反映する形で、「金日成金正日憲法」と称されるに至っている。

 社説は、「金日成金正日憲法こそが主体革命偉業遂行の力強い法的武器である」とした上で、「国の法規範と規程を徹底して守ることは、極めて切迫した問題として提起されている」として、今日的課題として憲法以下の法規範の徹底を呼び掛け、その必要性の主な根拠として3点を掲げている。

 第一は、「遵法気風」確立のためである。その狙いは、「非社会主義的行為と権力乱用と官僚主義をはじめとした人民の利益を侵害する幻想を根こそぎにし、我が党と国家の人民的施策の生活力を余すところなく発揚」することとされている。これは、主に幹部の専横的行為を抑止することを念頭においたものと解釈できる。

 第二は、「すべての人民が法を自覚的に良心的に守っていくこと」のためであり、その狙いは、「帝国主義者のいかなる策動も足を踏み入れことができず、我々の革命陣地はより鉄壁に固められる」ようにすることである。これは、主に外来文化の浸透・流布などを法的に抑制することを念頭においたものと考えられる。

 第三は、「経済強国建設をより加速するため」である。その趣旨については、「すべての経済的テコを合理的に利用し、自立経済の威力を余すところなく発揚し人民経済全般を活性化しようとしても、規律と秩序を強く確立しなければならない」とやや婉曲にしか説明されていない。独断的に解釈すると、利潤などの「経済的テコ」すなわち市場経済的要素を大幅に導入する前提として、各プレイヤー相互の信頼が必要であり、詐欺的・背信的な行為などが蔓延するようでは、経済の発展は期待できないとの趣旨から、中央集権的な計画・命令がなくとも市場秩序が自ずと維持されるための基盤として、法的な規律・秩序の確立を求めているのではないだろうか。

 いずれにせよ、この点は、「我が党が現時期、全社会に革命的遵法気風を立てることについて重要なものとして強調している理由の一つがここにある」とその重要性が強調されている。経済分野への市場経済的要素導入が及ぼす社会秩序への悪影響が無視できない問題となっていることをうかがわせるものといえよう。

 社説は、次に、法規範の厳守という課題に関し、各種幹部に対する要求を掲げており、興味深い。すなわち、「経済指導幹部」に対しては「特典、特恵を追求してはならず、経済道徳生活においても清廉潔白でなければならない」とされ、「人民政権機関幹部」に対しては、「常に党的、国家的立場に徹底して立って、社会主義法を解釈し適用しなければならない。法執行において2重規律を許容してはならず、党との人民の利益、革命的原則をしっかりと固守していかなければならない」としており、それぞれの層がいかなる問題を抱えているかを強く示唆している。

 北朝鮮のような国において、「法を厳守すべし」と主張されていると言うと、人民の行動を抑圧統制する狙いによるものとの印象を受けがちであるが、むしろ幹部による不正・専横の抑止などの意味合いが強いことがうかがえる。

 もちろん、北朝鮮においても、生産現場などで「法の遵守」と言った場合、勤労規律の厳守であるとか、「計画も法」との立場から所与の生産目標の達成などが意味されることがあり、今日においてもそのような意味が没却されているわけではないが、少なくともこの社説を読む限り、指導部の主な問題意識は、前述のような点に向けられていると考えられる。