rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月28日 『民主朝鮮』記事から電力法の改正について

 

 27日の韓国「聯合ニュース」によると、内閣機関紙『民主朝鮮』が、26日、「電力法の一部内容が修正補充された」と題する記事を掲載、最高人民会議常任委員会が6つの条文を改正し、「電力工業と電力利用、電力部門事業に対する指導統制において規律と秩序を厳格に立て、電力浪費をなくし、増加する人民経済の電力需要を保障することができる法的担保がしっかり準備された」と伝えたそうである。条文の具体的内容は報じられていないという。

 労働新聞紙上においても、電力部門に対する増産支援ないしその燃料供給源たる石炭増産、あるいは電力節約などの呼びかけが頻繁になされており、電力供給が北朝鮮経済のネックになっていることは、本ブログでも指摘したとおりである。ここで伝えられた電力法改正も、そのような事情を背景に、電力の浪費防止策強化などのためであることは疑う余地がない。

 では、北朝鮮の電力生産は、そもそもどの程度なのか。上掲「聯合ニュース」記事によると、韓国統計庁の推測では、2018年段階で北朝鮮の発電設備能力は、8,150メガワット(韓国の15分の1)、発電量は249億キロワット時(韓国の23分の1)であるという。

 この発電量を過去のものと比較すると、「第2次7カ年計画」(1978~84年)の目標「500~600億キロワット時」(実績は未発表)や「第3次7カ年計画」(1987~93年)の目標「1,000億キロワット時」などには遠く及ばず(これら目標は非現実的なものであったのかもしれないが)、1975年に終了の「6カ年計画」の実績として公表された「280億キロワット時」にも満たない。ただし、それに先立つ「7か年計画」(1961~70年)終了時の実績は、「165億キロワット時」とされ、これよりは相当増加していることになる。

 そうすると、現在の北朝鮮の発電量は、せいぜい1970年台と大同小異ということになる。その後、北朝鮮では、長年にわたり水力発電のための大規模なダム建設などを続けてきている。それにもかかわらず、現在の発電量がその1970年代から大きく増加できていないということは、何を意味するのであろうか。

 当面の問題は、稼働率の低さであろう。上掲の統計から単純に計算すると、北朝鮮の単位当たり発電施設の生産量は、韓国の65%程度である。仮に韓国と同等程度の稼働ができれば、既存の発電設備をもってしても、現在の1.5倍程度の生産が可能ということになる。

 では、稼働率が低い原因は何か。上掲「聯合ニュース」なども含めて、最近の北朝鮮の電力事情を論じる記事では、経済制裁(石油禁輸)の影響が指摘される。しかし、それだけではないであろう。まず発電設備の保守・整備の悪さが大きく影響していると考えられる。このほか、水力発電を支える貯水湖への土砂堆積などの影響もあるのではないか。更に言えば、そもそも韓国とは、水力と火力の構成比が異なると思われるが、それは影響しないのであろうか。そういった意味で、先に完成が報じられた漁郎川発電所八郷ダムのような大規模工事に巨額の資金を投じるよりも、既存の発電施設の稼働率向上のための保守整備や配送電における電力損失を低下させるなどの事業を地道に行うことが必要なのではないかとも思われるが、どうなのだろうか。

 いずれにせよ、北朝鮮にとって、電力の需給改善のため当面実現可能な急務は、節電ないし電力使用の効率化などであるのかもしれない。それが今回の電力法改正につながっているのであろう。