rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月28日 評論「『生産も学習も生活も抗日遊撃隊式に』」

 

 同評論は、このスローガンが1974年3月、金正日によって提唱されたものであることを明らかにした上で、金正恩が最近(白頭山踏査行軍キャンペーンを打ち出す中で)改めて打ち出したことの趣旨を説くものである。

 まず、同スローガンが今日必要とされる理由として主張されているのは、外部からの圧迫強化に対抗するための精神的支えを得ることであると考えられる。すなわち、「我々の前進発展を妨げようとする敵対勢力の反共和国圧殺策動は、より悪辣になりつつある。しかし、今日の条件と環境がいかに難しく、大変だとしても、抗日武装闘争時期に比べれば何でもない」という発想が大切なのである。

 では、同スローガンを具体的に実践していこうとした場合に求められることは何か。評論は、次の3点をあげている。

 第一は、「抗日遊撃隊員が発揮した固い闘争精神と気風で託された革命任務を無条件に最後まで遂行すること」とされる。ここで重要なのは、「無条件に」という部分であろう。先般の本ブログでも指摘したとおり、幹部の間で、経済制裁による物資不足などを名目とした「条件多発」が日常化していることを受けての主張と考えられる。

 第二は、「抗日遊撃隊員の革命的学習気風を模範に学習を第一の革命任務とみなし、絶え間なく実質的に行うこと」である。ただし、ここで求められている学習の内容は、おそらく抗日遊撃隊員たちが学んでいたとされるものとは異なるであろう。「現時代は知識経済時代、実力戦の時代である」ことが強調され、世界に通用する科学技術知識の習得などに努めることが期待されていると考えられる。

 第三は、「(抗日遊撃隊員が)いかに難しく大変な環境に処しても、生活を秩序整然と、文化的に行った」ことに鑑み、「今日、社会主義生活文化を確立」することである。これが具体的に何を意味するのかやや曖昧な感を拭えないが、遊撃隊員が苦境においても朝起きて水がなければ雪を使ってでも洗面をし、一晩の仮住まいでも宿営地の整頓に心掛けたなどと主張していることから推測するに、かねて強調されている公衆道徳・秩序などの確立、服装・髪型などの端正化、さらには外来資本主義文化の排斥などが念頭にあるのではないだろうか。

 こう見てくると、同スローガンの提唱は、まさに今日、喫緊となっている課題への対応を狙いとしたものであり、金正恩が単なる懐古趣味、精神主義で昔のスローガンを持ち出したわけではないということが明らかになる。

 それにしても、1974年3月というのは、金正日の後継者としての地位確立において決定的な時期と言って過言でない。その時に打ち出したスローガンを敢えて提唱するからには、やはり現状に対する金正恩のそれなりの覚悟なり、切迫感なりがあってのことではないかと推察できる。間もなく開催の中央委員会全員会議の内容が注目される。