rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

10月28日 論説「果敢な攻撃戦は進取的な働き方を要求する」

 

 標記論説は、「党の呼びかけに答えて80日戦闘場ごとで誇らしい偉勲を創造しよう」との共通題目の下、各部門における80日戦闘の生産成果などを紹介する記事とともに掲載されたものである(記事については後述)。

 論説は、「現時期、我々が帯びるべき進取的な働き方」について、2つの特徴をあげている。第一は、「新たな夢と抱負と理想を抱き、それを実現するために苦心し努力する」との姿勢である。そして、そのためには、「条件が困難であるほど、課題が膨大であるほど、科学的な打算と真摯な研究により方途を模索し、最も正確な発展方向を探求し、覚悟を決めて粘り強く奮闘」することが必要としている。

 第二は、「発見、創造、革新のような新しいものでなければ退かない」との姿勢である。このような主張の背景には、「国力競争が熾烈に繰り広げられ、国の興亡盛衰が国力によって左右される今日の世界において、古く立ち遅れたものを踏襲することは自ら自滅を促進する愚かな態度である」との認識があり、それに基づき「世界と競争せよ、世界に挑戦せよ、世界に先立て、まさにこれが今日、我々式の発見と創造、革新の目標であり、基準である」と訴えている。

 また、それを実現するための前提として、「新しいものは実力家だけが生み出すことができ、評価することができ、そうなろうとするなら、高い政策的眼目と科学技術実務能力を帯びることが必須的である」と主張し、幹部に実力涵養を訴えている。

 以上のような進取的発想が、表面的には精神主義一辺倒、思想的硬直性におおわれて見える北朝鮮を特徴づける一つの要素であることは間違いないであろう。

 次に、各生産現場に関する記事としては、①「180余個の作業班、4百数十人の機関士たちが5カ年戦略目標を完遂 鉄道運輸部門において」、②「大動力基地に満ちる革新の気象 北朝鮮倉火力発電連合企業所で電力生産増加」(毎日110%以上超過遂行と紹介)③「セメント生産計画1.1倍以上突破 祥原セメント連合企業所にて」、④「戦闘目標を毎日超過達成 득장(得場?)地区炭鉱連合企業所にて」の4件がある。

 4件に共通して言えることは、部門全体の成果に関する記事ではなく、特定の企業所などの成果を紹介するものであることである。このことからは、全体として目標を達成できている部門はおそらく存在しないということがうかがわれる。これまでは、特定部門については、部門全体としての「超過完遂」が報じられていただけに、「息切れ」の兆しとも考えられ、今後の報道が注目される。

 個別的には、①の記事が「5か年戦略目標」(「国家経済発展5カ年戦略」に基づくものであろう)を基準にしていることから、「80日戦闘」において「5カ年戦略」が視野に入れられていることが改めてうかがわれる。今後、それに基づく目標達成報道がどの程度出てくるかに関心がもたれる。