rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

1月11日 評論「科学技術は正面突破戦の鍵」

 

  標記評論は、科学技術が「正面突破戦」における重要性を、①経済、②軍事、③思想の三つの面から説明している。そこで特徴的なことは、いずれの面に関しても、敵との対決という視点から科学技術の果たすべき役割を論じていることである。

 まず、①の経済面については、「敵対勢力の経済封鎖策動を無力化し、国家経済を計画的に持続的に成長させることができるようにする力強い推進力」と位置付けている。そこで強調されるのが「自力更生」実現への貢献であることはいうまでもない。

 次に②の軍事面では、「誰も侵すことのできない無敵の軍事力を保有し、引き続き強化していけるようにする担保」と主張している。ここでは、「我が党の国防建設の中核的な構想」が「いかなる勢力であっても、我々を相手に敢えて武力を使用しようとの考えを持てなくすること」、すなわち抑止力の確立にあるとした上で、そのための方策として、「国防科学分野の人材力量をしっかりと整備し、先端科学技術に基づき国防科学の主体化、現代化を高い水準で実現するとき、我々式の威力ある戦略武器と武装装備を続けて開発生産し、我が国家の尊厳と安全を固く担保することができる」と説明している。

 以上のような国防建設に関する表現は、昨年の短距離誘導兵器の試射などに際し述べられたことの枠を超えるものではない。「正面突破戦」の提起にもかかわらず、少なくとも現在までのところ、国防建設に関する表現の水準に留保されていることは、留意されるべきであろう。米国との「非核化」交渉の枠組みを完全に破たんさせる意図がないことがうかがわれる。

 最後の③については、化学技術が「思想文化戦線においても威力ある武器となる」とし、大別して二つの効用を挙げている。まず挙げられているのは、敵が情報技術などを悪用して北朝鮮への思想文化的浸透を加速しているとの前提で、「(そういった)敵どもの悪辣な策動を徹底して粉砕し、電波空間とインターネット網を我が共和国の位相と社会主義制度の真の姿を紹介宣伝する場とする」ことである。

 あわせて求められているのが、「すべての人民を党の革命思想、白頭山精神でしっかりと武装させ、全社会に健全で文明的な文化情緒生活気風、道徳気風を立てるための思想教養事業を斬新で実効性のあるように展開」するために、「現代的な情報手段を積極的に活用」することである。