rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

1月10日 評論「農業戦線は正面突破戦の主打撃前方」(11日一部修正)

 

 先の中央委員会会議に関する報道において、経済分野の中での農業部門の位置づけは、必ずしも高くないとの印象を受けていたが、この評論によると、相当の重要度が付与されていると考えるべきかもしれない。

 評論は、まず「主打撃前方」について、闘争において最も力量を集中すべき箇所とした上で、農業が何故それほど重要であるのかを解説している。

 その第一の理由は、他の様々な課題におけると同様、やはり「敵どもの圧殺攻勢が加重されている今日の逆境」であり、それに対抗するためには、「農業戦線から生産的高揚を起こし、突破口を開かなければならない」とされる。ただし、ここでは、何故、他の部門ではなく「農業戦線から」なのかは明示的には説明されていない(結局は、第二の理由に収れんするとも考えられる)。

 評論は、昨年度が「最高収穫年度水準」を超える大豊作であったとしつつ、そのような農業の好調ぶりに続けて、「人民の食べる問題、食糧問題を完全に解決しようとするなら、今の成果に自慢自足することはできず・・・一層の豊作をもたらさなければならない」と主張している。過去の最高水準を超えても、「完全な解決」にはなお不十分ということであろうか。

 第二の理由は、「現時期、農業生産を決定的に増やす」ことが「単純な経済実務的問題である前に、民族自存、国家の尊厳を守る深刻な政治的問題である」ためである。

 その意味は、「ほかのものはなくとも我慢できるが、空腹とは妥協できない」のであって、「我々に必要なすべてを自給自足するときだけが国家の尊厳と自主権を固く守ることができ・・・人民の食生活が向上する時、大衆の革命熱、闘争熱、愛国熱はより高潮することとなる」と説明されている。余談だが、「空腹とは妥協できない」との表現は、なんとも切実であり説得力を感じる。

 要するに、食糧問題の解決は、対外的には自主性を担保し、国内的には民心を収攬するための不可欠な課題と位置付けられている。これを換言すると、現在、食糧問題のために、対外的な尊厳が損なわれ、民心収攬の阻害要因となっているということであろう。とりわけ前者については、食糧供給国となっている中国との関係を示唆したものとも考えられ、注目される(後者は、想定の範囲内)。