rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年12月2日 評論「社会主義の全面的発展に関する思想の基本内容」

 

 標記評論は、冒頭に金正恩の「帝国主義とのし烈な対決の中で国と民族を単位として遂行される社会主義偉業は、政治と軍事、経済と科学技術、文化のすべての分野において強国の徴表を備えた国家建設を通じてのみ勝利的に完成されることができる」との言葉を掲げた上で、「社会主義の全面的発展に関する思想の基本内容」として、①「何よりも、政治と国防建設を重視しつつ、経済、文化の発展にも大きな力を注ぎ、国家社会生活のすべての分野を全面的に発展させること」、②「次に、人民経済全般部門とすべての単位を均衡的に発展させること」、③「次に、地方建設、農村建設を力強く推進し、国のすべての地域を均しく、特色を持って発展させること」の3点をあげている。

 「社会主義の全般的発展」を目指すことは、最近の金正恩の各種演説・書簡などを通じて、繰り返し強調されてきたところであるが、同評論は、その背景として、「帝国主義とのし烈な対決」を挙げた上で、①において「政治、国防建設」を優先することを明記しており、非常に注目される。これは、「国防・経済」の並進路線、さらに言うなら「先軍路線」への復帰を宣言するものとさえ言えるのではないだろうか。

 このほか、②については、経済諸部門の間に著しい不均衡があるとした上で、「(そうした)不均衡的な発展に終止符を打ち、経済発展の均衡を保障してこそ我々の国家経済を自立的で持続的な発展へと確固として移行」できると主張している(ただし、その理由は明らかにしていない)。また、③については、「重要なことは、自分の地方の特色を生かすこと」として、地理的条件の活用などを訴えている。

 なお、このテーマをめぐっては、11月30日付け「労働新聞」にも「社会主義の全面的発展に関する思想の本質」と題する評論が掲載されていたが、同評論は、それを3大革命と結び付けて論じていたほかは、概して抽象的な内容であった。

いずれにせよ、こうして「社会主義の全般的発展」に関する解説が短期間に重ねて掲載されるのは、それが重要な命題として浮上していることを示唆するものと考えられる。今月下旬開催の中央委員会全員会議において、このテーマがどのように扱われるのかも一つの注目点と言えよう。