rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月23日 評論「大衆運動の炎で革命の前進を推動される賢明な領導

 

 標記評論は、労働党の伝統として、「我が党は・・・革命発展の段階ごとに各種の形態の大衆運動を広く組織展開し人民大衆の集団主義的威力、大衆的英雄主義が高く発揚されようにした」ことを主張し、その上で、金正恩によるその取組みについて次のとおり説明している。

 まず、「大衆運動」に関する金正恩の総論的な立場については、2016年12月に開催された第1回全党初級党委員長大会での結論において、「3大革命赤旗獲得運動と君子里労働階級称号獲得運動をはじめとした大衆運動と最近に党において多く強調するように追いつき追い越す、追いつき学ぶ、経験交流運動を力強く組織展開し、党策貫徹のための闘争においてその実効性が高く発揚されるようにしなければならないと強調」したことをあげる。

 評論は、続いて、金正恩がそのような方式を提唱した具体的事例をあげている。

 最初に取り上げられるのは、2015年9月、「ある一工場を現地指導」した際、「我が労働階級が1950年代君子里労働階級のように生き、闘争するなら占領できない要塞はないと話され、3大革命赤旗獲得運動とともに、君子里労働階級の闘争精神と闘争気風に従い学ぶためのより高い形態の大衆運動を展開するのがよいと強調」したことである。こうして「より高い形態の大衆運動である君子里労働階級称号獲得運動」が開始されたという。

 ちなみに、「君子里」とは、平安南道成川郡内の、朝鮮戦争中、物資不足等の困難な状況下で兵器等を生産した工場が置かれていた山地集落の名称で、当時、「君子里精神」として称揚されたという。金正恩は、2016年の新年辞でも「君子里革命精神を発揮」するよう呼び掛けている。ただし、少なくとも近年、「君子里労働階級称号」が授与されたとかの報道は見受けられず(精神論的な「君子里」への言及は少なくないが)、同運動が現在、具体的・制度的にどのように進められているのか(あるいは、いないのか)は不詳と言わざるを得ない。

 次に取り上げられるのは、上述の現地指導を遡る2014年11月、中央養苗場を現地指導した際、「社会主義愛国林、模範山林郡称号獲得運動のような大衆運動を力強く展開することについて強調」したことである。

 途中を省略して最後の例に移ると、昨年(2019年)10月の中坪野菜温室農場・養苗場の建設場現地指導の際、「社会主義農村文化建設においても、時代的要求に合わせて不断に新たな模範、見本を創造し、それを火種として、追いつき追い越す、追いつき学ぶための闘争を力強く展開し連帯的革新が起きるようにしなければならないと述べられた」ことが上げられている。

 評論は、以上のような事例を挙げた上で、「全国のあちこちで、追いつき追い越す、追いつき学ぶ、経験交流運動がより活発に展開される中、模範単位が輩出され、新たな奇跡創造の炎が燃え上がっている」としている。

 以上の評論の主張から察するに、金正恩時代の大衆運動の特徴は、「追いつき追い越す、追いつき学ぶ、経験交流運動」に集約されているといえよう。その前提として、追いつかれるべき「模範」の創造があることはいうまでもない。その上で、その「模範」をより幅広く、急速に普及するための運動として大衆運動が位置付けられていると考えられる。

 一昨日(5月21日)の本ブログで「肯定感化教養」という指導法を取り上げたが、以上のような大衆運動も、前述のような意味で、その延長線上にあるものといえる。それが金正恩のお好みのスタイルなのであろう。