rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

5月29日 記事「基本は自体の技術力量である」

 

 「科学技術」導入による生産の伸長が経済建設の重要な柱として推奨されていることは改めていうまでもないが、それが具体的にどのように推進されているのかを示したのが標記記事である。

 記事は、海州基礎食品工場において、「4・15技術革新突撃隊員達と黄海南道科学技術委員会研究士達が緊密に協力して、工場統合生産体系を構築するための事業を本格的に推進している」状況を紹介するものである。

 記事によると、「去る3月に始められたこの事業は、3月もしない短い期間で完成段階に入った」とのことであるが、そのような成果は、決して道科学技術委員会研究士の高度の科学知識だけで成し遂げられたものではなく、生産現場の実情を熟知した工場の技術力量が大きく貢献したという。

 「この数か月の間に工場の技術者、技能工達は統合生産体系に用いられる重要プログラムを作成し、食塩水タンクの塩度、温度自動操縦装置をはじめとした10余個の末端自動化装置を作成する上で、極めて重要な役割を果たした」のである。

 あわせて記事が強調するのは、そのような工場自前の技術力量が工場経営陣の意識的な努力の結果、育成されたものであることである。すなわち、「幹部達は、はるか以前から生産工程と経営管理を情報化、科学化する上で提起される問題を解く実践過程を通じて技術者、技能工達の研究開発能力を粘り強く高めてきた。そのために、責任幹部自らが資材引受人になり、後方幹部になって(その役割を果たして、の意)、必要な研究条件、生活条件を円滑に保障してやるため努力し、機会があるたびに提起される隘路を把握し、その都度解決してやることで、技術者、技能工達の創造的熱意を積極的に呼び起こした」という。

 また、現在もそのような努力の延長線上で、「このたびの統合生産体系構築事業も、同所の幹部達は、自体の技術力量をより強化するための重要な鍵とみなし・・・能力のある技術者、技能工達を研究導入組に漏れなく網羅し、道科学技術委員会研究士達と共に提起される科学技術的問題を解決していく過程を通じてより高い水準の情報化実践能力を涵養するようにしている」として、工場経営陣の姿勢を称賛している。

 要するに、この工場の事例を通じて記事が主張したいことは、「自体の技術力量を強化する事業を瞬間も疎かにせず、粘り強く推進して研究開発能力を絶え間なく高めていく」ことの重要性といえよう。

 以上の記事内容は、もちろん、北朝鮮の一般的実情というよりは、模範的事例ないし模範化された事例というべきであろうが、いずれにせよ、このような取組みを随所で推進し、生産現場の技術的底上げを幅広く実現していくというのが北朝鮮当局の目指すモデルであるということが理解できる。

 もう一つ注目されるのは、技術陣支援の具体的方策の中で、「研究条件」のみならず「生活条件」の保障が含まれていることで、依然、北朝鮮勤労者の生活が決して楽なものではないことが改めてうかがえる。