rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月25日 金英哲党副委員長が談話(24日付け)発表

 

 朝鮮中央通信によると、「南朝鮮軍部に注意を喚起する」と題する金英哲党副委員長名義の24日付け談話が公表された。ただし、本日の「労働新聞」紙面には、これは掲載されていない。

 同談話は、北朝鮮の中央軍事委員会が対南軍事行動計画を保留したことを確認するとともに「推進中にあった一連の対南行動(複数)も中止させる措置を取った」ことを明らかにした上で、これに関連して韓国の国防部長官が行った発言を「対立的な軍事的性格が濃厚な行動強化の立場を露わに表明」「度を越えた失言」などと論難するものである。

 同談話には、また、南北関係の現状について「南朝鮮当局の今後の態度如何によって北南関係の展望について占うことができる」時期との認識を示した上で、「朝鮮半島の軍事的緊張緩和は、・・・相互尊重と信頼に基づいた双方の努力と忍耐によってのみはじめて守られ担保されうる」などと主張している。

 そして、結びの部分では、「(このような)失言によって北南関係により大きな危機状況がもたらされてはならない。自重が危機克服の『鍵』であることを知らなければならない」として、これ以上の緊張激化を望まない意向を明白に示している。

 以上のような談話の内容は、先日までの緊張を煽ってきた態度を一変させるものである。改めて、その君子豹変ぶりの驚きを禁じ得ない。

 今後、具体的に韓国のいかなる行動を期待しているのか、注目される。

 なお、従前の金与正を前面に立ててきた進め方との関係で言えば、必ずしもそれと矛盾するものではないと考える。最近の談話の批判対象を見ても、金与正は文大統領、張今哲統一戦線部長は青瓦台、統一戦線部代弁人は統一部、そして今次の金英哲副委員長は国防相であるから、やはり金与正のランクは維持されているといえるのではないか。

 また、今次金副委員長の談話は、前述のとおり今日の労働新聞には掲載されていない。そればかりか、今日6月25日が朝鮮戦争勃発70周年の記念日であることから、同戦争に関する記事が社説をはじめとして多数掲載されている(別稿にて紹介予定)にもかかわらず、ビラ関連の対韓非難記事は、昨日同様まったく影を潜めているのである。

 このような報道振りの変化は、キャンペーンの基本的狙いが、これまでの国内向けから、今後は、対外向けへと転換したことを物語るものといえよう。6月4日の金与正談話を契機に開始されたキャンペーンは、新たな局面(第二幕)に入ったと考えられる。