rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

6月27日 記事「党中央委員会政治局会議の決定貫徹に沸き立つ  平壌市党委員会において」

 

 標記記事は、6月7日に開催された党中央委第7期第13次政治局会議において、第二議題として「首都市民の生活保障で提起される当面の問題」が取り上げられ、金正恩が「至急解決すべき問題を具体的に指摘しつつ、住宅建設をはじめとする人民生活保障と関連した国家的な対策を強く立てることについて強調」し、それら問題を「解決するための重要問題が討議された」ことを受けて、地元の平壌市党委員会がいかなる取り組みを行っているかを紹介するものである。

 同会議後は、「ビラ」騒動に関心が集中していたので見落としたかもしれないが、私の気づいた限りでは、この記事がそれに関するはじめてのものと思われる。

 記事の紹介する対策の第一は、会議「精神」の徹底である。すなわち「幹部と大衆を党中央委員会第7期第13次政治局会議の思想と精神によってしっかりと武装させるための宣伝扇動事業を各種形式と方法で力強く展開している」ことである。何かの方針が決定された場合は、まず、その趣旨の徹底からはじめるのは通例的な活動方法であるが、会議で「至急解決すべき問題」が指摘されていたわりには、やや「かったるい」という印象もある。

 いずれにせよ、その上で「会議で提示された綱領的課題を徹底して貫徹するための具体的な目標を現実性を持って立て、(その取組みに関する)組織政治事業を行っている」という。

 その内容としては、①市の幹部がそれぞれ地域を担当し、首都市民の生活向上の重要性を下部単位幹部に解説しつつ、率先垂範して懸案案問題解決の突破口を探すこと、②市民の住宅問題と食糧問題、野菜問題をはじめとした人民生活に転換をもたらすことに優先的に取り組む、などがあげられている。

 ②に関しては、その具体策として、梅雨時期前に住宅補修を完了、野菜甫田を整備、群衆の声を傾聴し懸案問題を適時に責任を持って解決、工場・企業所の生産正常化・効率化などを促進し首都市民の生活向上に貢献する質の良い製品を増産、などがあげられている。

 以上のよう記事の内容からうかがえるのは、「首都市民の生活保障問題」なるものが、例えば食糧の絶対的不足などのような緊迫した問題への対応というよりは、むしろ市民の生活上の諸々の不満・不便などを迅速に責任を持って解決することないし当局者の間にそのような執務姿勢を徹底することにあったのではないか、とうことである。

 韓国の一部報道では、平壌においてさえ食糧配給が途絶えたとか維持が困難になったとかの話が伝えられているが、それと上記記事の伝えるところには大きな乖離が感じられる。基礎的な食糧配給が困難な状況下で、野菜問題がとりあげられるだろうか。むしろ、最低限の生存条件を心配する必要から解放された市民の当局に対する期待水準が高まり、また多様化したため、当局がそれに対応できず、そのことへの不満が募っていると考えた方が、上記記事と符合するように思える。どうも韓国発の「北朝鮮経済悪化」説は、具体的な根拠不明のまま、当初の「観測」が互いに反響し合って既成事実化しているような印象がぬぐえない。

 昔、日本のある自治体の首長が住民からの人気取りを狙って、市役所内に、住民の要望には何でもすぐに対応する「すぐやる課」を設けたことがあった。今回の政治局会議の「精神」も、これと類似の発想なのではないだろうか。