rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月4日 社説「最強の国家防衛力を固めたその精神で我々式社会主義の前進発展を加速化しよう」

 

 標記社説は、3年前の2017年7月4日に大陸間弾道ミサイルの試射を実施したことにちなんだものである。

 社説は、「すべての人民が大陸間弾道ロケット保有を慶祝し、巨大な激情と歓喜、民族的矜持と自負心にあふれて、声の限り万歳を叫んだその日」を「7・4革命」と呼び、「我が革命発展において重大な意義を持つ民族史的な大慶事である」として、その意義の大きさを強調している。

 そして、同ミサイル保有の結果として、「世界政治構図は根本的に変化することとなり、我が人民は平和と繁栄のしっかりとした担保の中で創造と建設の槌音を力強く轟かせることができるようになった」と主張する。

 実は、以上は前置きであり、同社説の本来の主張は、この後から始まる。それは、皆が「(このような偉大な成果を上げた)国防科学戦士達のように不屈の精神力と創造力を総爆発させていくならば、やり遂げられないことはない」との覚悟の下、日々の課題に奮闘することである。

 そのために求める内容は、従前の訴えと何ら変わらない。すなわち、①「党の思想と路線を心を一にして忠実に奉じていく」こと、②「社会主義のすべての戦線で自力更生、自給自足の旗幟を高く掲げていく」こと、③「すべての人民が国防科学戦士達の創造精神、闘争気風を徹底して具現していく」こと、④「幹部達の責任性と役割を最大に高める」ことである。

 なお、同日の紙面には、同社説のほかにも、「金日成民族、金正日朝鮮の自主的尊厳と威力を最上の高さに昇らせた不滅の業績 祖国青史に永く輝く」との共通題目の下、同ミサイル発射の意義を強調する記事がいくつか掲載されている。

 そのうち「強国の尊厳」と題する政論は、冒頭で「国と民族において最も貴重なものは尊厳である」とした上で、「尊厳を守ってくれる愛よりもっと大きい愛はなく、そのために傾ける情よりも涙を誘うものはない」として、ミサイル開発などによって国の尊厳を発揮した金正恩の功績を称賛し、同人への忠誠を訴えている。

 また、「勝利者の追憶」と題する評論は、「7・4革命」について、「我が共和国を地域の安定と世界の平和を守護することのできる威力ある力を帯びた強大な国として世界の上に高く昇らせた民族史的大慶事の日」と称えている。そして、「火星14」の発射が「大きな民族的矜持と自負心」につながるものであることを強調している。

 以上のような一連の記事の論調は、上述のとおり、大陸間弾道ミサイルを開発した「国防科学戦士」の姿勢に学ぶことやその保有により「国家の尊厳」や「民族的自負心」が大いに発揚されたことなどを強調するものであって、直ちに、その開発再開などを論じたものではない。

 さはさりながら、やはりその試射記念日にこうしてまとまった形でその意義を強調していることの意味は無視できないものがある。ちなみに、「7・4革命」なる表現を「労働新聞」のホームページで記事検索してみると、2018年3月以前は頻繁に用いられていたのが4月以後は影を潜め、2019年には2回だけ(8月、10月。いずれも金正恩の業績回顧における一例としての言及)であり、今年は、本日の掲載(一挙に4件)がはじめてのようである。また、昨年7月4日紙面の記事題目を一覧してみたが、同発射に直接関連するらしきものは見当たらなかった。要するに、本日の紙面構成は、2018年4月以降封印してきた「核・長距離ミサイル開発」の扉を再び開く気配を示唆したものと言わざるを得ないであろう。

 これは、先の中央軍事委員会予備会議における「戦争抑止力強化」への言及とも軌を一にした動きと考えられる。同本会議の開催がますます注目される。