rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月20日 金正恩平壌総合病院建設場を現地指導

 

 標記記事は、指導の日付は示していない。同行者の言及はなく、現地で、朴奉柱、朴泰成党副委員長及び金才竜総理と平壌総合病院建設連合常務の幹部が出迎えたとされる。「連合常務」とは、関係機関からの派遣者により構成された臨時指揮部のようなものであろう。

 同記事によると、金正恩は、「困難な環境の中でも建設が非常に速い速度で進捗してきたと言って、建設者達の労力的偉勲を高く評価」した一方、「平壌総合病院建設連合常務から工事全般実態についての具体的な報告を受けて、建設と関連した経済組織事業に表れた深重な問題(複数)を厳しく指摘」したとされる。

 具体的な問題点として指摘したのは、「いまだに建設予算も正しく立てていない」ことや「各種『支援事業』を奨励することによって、人民にむしろ負担を押し付けている」ことなどであり、「このままにしておけば、我が人民のための栄えあるやりがいのある建設闘争を発起した党の崇高な構想と意図が歪曲され、党のイメージが汚されるおそれがあると厳しく批判」したという。

 その対策として、「党中央委員会該当部署において平壌総合病院建設連合常務の事業状況を全面的に了解(調査・点検)し、責任ある幹部を全部交代(更迭)」させるよう指示したとされる。

 以下は、推測であるが、同病院建設に関しては、「支援事業」の名目で各地住民らに対して、物資供出などが半ば強制的に割り当てられ(各地からの「支援物資」送付などは時折報道されていた)、それに対する不満の高まりが金正恩の耳にも入っていたのではないだろうか。今回の現地指導は、「今のやり方は、人民のためと思って始めた党(=金正恩)の志を生かしておらず、むしろ人民の不満を招いている」ことをアピールして、そのような不満の責任を「連合常務」に取らせ、自分に及ぶことがないようにするためのものであったと考えられる。

 しかし、完工期限まで約80日の時期に、工事指揮部に対する「全面的了解」や責任者の全面更迭を実施して、果たして工事を予定通り完成できるのであろうか。建物自体はそれなりに姿を現しているようにも見えるが、内部の施設・設備については、調達の困難も伝えられている。

 ただ、それについても、更に勘ぐれば、今回の指導は、期限内達成が困難なことは承知の上で、遅延した場合に備えて、「人民に負担を掛ける方式を改善するため、工期の遅れを承知の上で、敢えて指揮部を交代させた」との口実をあらかじめ準備するものなのかもしれない。そうしておけば、うまく進めば、もちろん金正恩の「偉大な構想・英明な指導」の証明となるし、仮に遅延しても、そのような理由を掲げることにより、「外形的な成果よりも人民生活を重視する金正恩の恩情」をアピールできるであろう。