rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

7月30日 論説「党中央委員会政治局非常拡大会議決定の貫徹において無限の責任性と忠実性、献身性を発揮しなければならない」

 

 標記論説は、27日付け掲載の社説と同様、防疫活動の徹底を改めて訴えるものである。政治局会議の趣旨について、「最近、我が党は悪性ウイルスが我が境内に流入したと見ることができる危険な事態が発生したことと関連して、即時的で先制的な対策を取った」とし、その徹底にむけて次の点を訴えている。

 まずあげているのは、「党の意図をはっきりと認識し、覚醒奮発」することである。論説は、「現時期、我々が最も警戒すべきことは、このたびの事態の深刻性に気付くことができず、安逸な認識にとらわれて非常防疫事業を慢性的に、機械的に、実務的に行う現象である」としており、事態の重大性・深刻性についての意思統一がいまだ不十分であることをうかがわせている。

 その上で求めるのが、「党中央の指示と布置を最も正確に執行」することである。「(標記会議で採択された)政治局決定書には、すべての部門と単位、各公民が守るべき行動準則と規範が明確に示されている」として、その遵守を「党の決定、指示を貫徹するにおいて、全社会的な行動の統一を確固として保障してこそ醸成された危機を一日も早く解消することができる」と訴えている。

 なお、本日の「労働新聞」には、同論説に加えて、「党中央の周囲により固く団結し、直面する防疫危機を打開していこう 最大に覚醒し非常防疫措置をより厳格に」と題する評論及び崔龍海(国務委第一副委員長)が「開城市の非常防疫事業状況を了解」したとの記事(訪問日には言及なし。おそらく29日)はじめ、防疫活動の徹底を紹介・呼びかける記事が複数掲載されている。

 これら一連の報道は、北朝鮮がコロナ防疫対策の徹底に腐心していることを改めて示すものである。ただし、指摘しておきたいのは、感染状況についての記述がいまだ上述のとおり「流入したとみることができる」というにとどまっており、「流入した」とか「感染者が発生した」とかの確定的な表現は示されていないことである。

 なお、前掲評論では、「これまで・・ただ一人の新型コロナウイルス感染者も発生しなかった」と主張しているが、この「これまで」がどの時点を指すかは不明瞭であり、韓国報道のように現時点での不存在を主張したと断定するのは不適当であろう。

 結局のところ、北朝鮮の報道振りから勘案すると、「不法帰郷者」の入境(19日)から10日という時点で判断するのはやや早計かもしれないが、やはり、今回の事態については、その摘発を奇貨とした「覚醒奮発」強化のための「自作自演劇」である可能性に重きを置かざるを得ないように感じる。