rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月13日 「5か年戦略目標、年間計画完遂単位が増える」

 

 標記記事は、「党の思想貫徹戦、党政策擁衛戦の火の手を高く継続革新、継続前進」との共通題目の下に掲載された一連の記事の一つで、各種計画目標を完遂した四つの単位の取組みを紹介するものである。そこで紹介された単位と成果は次のとおりである。

 勝利湖セメント工場:「去る2日までに国家経済発展5カ年戦略目標を完遂した気勢で、毎日セメント生産計画を超過遂行している」。

 亀城工作機械工場:「年間人民経済計画を超過遂行した気勢で継続革新、係属前進している」

 鏡城碍子工場:「10月末までに年間人民経済計画を完遂し、被害復旧戦闘場に多くの電気設備と各種碍子を生産保障しつつ、現在託された一日戦闘計画を超過遂行している」

 安州絶縁物工場:「10月初までに年間人民経済計画を超過完遂した成果におごることなく、80日戦闘において連日、高い生産実績を記録している」

 同記事を通じて改めて確認できることは、①国家経済発展5カ年戦略に基づき、各単位に生産目標が割り当てられていること、②「年間人民経済計画」なるものが存在し、それに基づく生産目標が(①とは別途に)各単位に割り当てられていること、③「80日戦闘」に基づき、単位ごとに日々の生産目標が設定されていること、である。

 このうち①については、「国家経済発展5か年戦略」が「計画」ではなく、「戦略」と称され、設定に際して、従前の経済計画で示されたような主要物資の生産目標などの数字が(少なくとも対外的には)示されなかったことから、その種の生産目標を敢えて設定せず、経済建設の方向性などを示す誘導的な性格のものではないかとの観察(私も以前は、そのような見方をしていた)を否定するものといえよう。実際は、それに基づき、個別の工場にまで生産目標が付与されていたのである。

 ②についても、これまで「2020年人民経済計画」の内容はもちろんのこと、それがいつ、いかに策定されたかについて何らの発表もなされていないにもかかわらず、それに基づいて各工場にまで生産目標が割り当てられていたという事実は、北朝鮮の経済運営の実態を示すものとして興味深い。巷間では来た経済における「市場化」の拡散が盛んに指摘されているが、実際には旧来の中央集権型計画経済的な枠組みが根強く残されていることを物語っているといえよう。

 また、同記事において、勝利湖セメント工場を除いては年間生産目標を達成した単位について、5年戦略に基づく目標を達成したとは言っていないことから、今年の人民経済計画は、当初から5か年戦略の目標を下回るかたちで設定されていることもうかがえる。これは、おそらく国家全体を通じても言えることであろう。

 では、③の80日戦闘に基づく生産目標と①,②の目標との関係は、どうなっているのであろうか。③を最後まで達成できれば、①又は②が完遂できるような形で設定されているのか、それとも①,②とは関係なく、当面の必要性・可能性などから目標が設定されているのか、同記事だけでは何とも言えないが、注目される点である。

 最後に指摘しておきたいことは、同記事で紹介された「目標達成」の単位が「工場」に限られていることである。何かの部門であるとか連合企業所といった大規模単位では、5カ年戦略はもちろん年間計画についても、いまだ目標を達成できたところは存在しないのであろう(あれば、当然、それを報道するであろうから)。経済運営が全体としては、決して好調とは言えない状況にあることが改めてうかがわれる。