rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

11月25日 論説「質向上は重要な政治的事業」(11月26日記)

 

 標記論説は、「80日戦闘目標を成果裡に占領するにおいて一貫して堅持すべき原則的問題の一つは生産物と建設物の質を徹底して保障し、絶え間なく高めていくことである」とした上で、その理由を経済・政治の両側面から説明したものである。

 まず経済的側面については、「質向上は、すなわち増産であり節約である」と主張する。その意味は、「時間が緊迫し闘争課題が膨大であるからといって、速度一面にだけ重きを置いて生産物と建設物の質を最大に保障しなければ、再生産、再施工を防ぐことができなくなり、それだけ貴重な原料と資材、資金と労力を浪費することになる」ということである。

 次に政治的側面については、「我が人民の民族的矜持と自負心を昇華させる上でも質の向上が持つ意義は大変に大きい」と主張する。その理由は、「実際に我が国で創造される生産物と建設物が他人のものより良くてこそ、我が国家第一主義、我が制度第一主義が生活に基盤を置いた真実で強固なものとなることができる」からである。換言すると、「我々が世界を仰いで生産物と建設物の質を不断に高めていくとき、共和国の尊厳と権威はより高まり、社会主義の優越性と威力はより力強く誇示されることになる」。

 論説は、以上を踏まえて、「質向上を死活的な事業として打ち立て、生産物と創造物の質を高める闘争に知恵と情熱を惜しみなく捧げていかなかればならない」と訴えている。

 経済活動における「質向上」に関するこのような主張は、はじめてのものではない(本ブログでも以前に紹介したことがある)が、「80日戦闘」真っ盛りのこの時期に改めてそれを強調したのは、各生産現場がそれぞれの「戦闘目標」の実現を目指す余り、「量」を優先して「質」を無視し、結果的に文中でも指摘されているような「再生産」「再施行」すなわち作り直し、建て直しを余儀なくされるような事態を防止しようとの狙いによるものと考えられる。あるいは、既にそのような傾向が生じつつあり、それに歯止めを掛けようとの狙いによるものかもしれない。

 また、政治的側面の説明にも説得力が感じられる。確かに、日々の生活で国産品が概して粗悪と認識され「舶来品信仰」的な風潮があるのであれば、自国に対する誇りも「空念仏」ということになろう。そして、論説の前述のような主張は、そのような現実が存在していることを反映したものでもあると考えられる。