rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

12月18日 評論「最も重要で優先的な事業

 

 標記評論は、昨日に続く金正日の追慕関連記事の一つとして、「偉大な将軍様の不滅の革命業績を限りなく輝かしていこう」との共通題目の下、掲載されたものである。

 まず、「(金正日将軍様の偉勲を貫徹する上で最も重要であり優先的な問題は、人民生活を向上させることである」との金正日の言葉を掲げた上で、その理由として次の2点をあげている。

 第一は、「何よりも、それが将軍様の人民愛の崇高な志と念願をこの地に立派に花咲かせるための事業となるから」である。

 第二は、「次に、人民生活向上のための事業が我が党活動の最高原則であるから」である。このような理由の前提となるのは、「我が党の政治理念は、人民大衆第一主義である。したがって、党の路線と政策、方針は、みな人民のためのものとして一貫している」、「敬愛する(金正恩)元帥様は、人民生活向上問題を千万の国事の中でも第一の国事として立てられた」という事情である。

 そして、評論は、最後に、「党組織と党幹部がすべてのことを偉大な将軍様が教えて下さったとおり、敬愛する元帥様が望まれるとおり行っていくとき、我が人民が他人をうらやむことなく生きるようになるその日は、より近づくことになるであろう」として、党幹部に対し、金正日金正恩の「志」の実践を求めている。

 以上のような評論の内容(とりわけ二番目の理由)は、昨日の本ブログで指摘した、金正日の「志」の解釈が今日的必要性に基づきなされるということを自ら認めたものといえよう。実体的に考えても、金正日の政治路線といえば、やはり「先軍」路線をあげざるをえず、その特徴は、軍事を「国事中の国事」として優先したことである。金正日が人民生活向上についても諸々腐心したことは否定できないにせよ、それを「最も重要な優先的課題」とするというのは、すぐれて今日的選択の結果ということであり、同評論は、そのような選択を行っていることを自ら認めたものといえる。

 もう一つ注目されるのは、そのような目標選択の結果を具現化する責任を党幹部に求めていることである。それを延長すると、仮にそれが実現できないとすると、それは党組織ないしそれを運営する党幹部の責任と言うことになる。

 最後に付言すると、「他人をうらやむことのない生活」は、かつては現実のもの(北朝鮮の現状)として主張されていたように思うが、同評論では、将来の目標として描かれている。いつの間にそうなってしまったのであろうか。