rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月9日 「党大会決定貫徹紙上演壇 新たに革新し、大胆に創造し、不断に前進しよう」

 

 本日の「労働新聞」は、標記の共通題目の下、経済各部門関係者の投稿文を掲載している。

 その冒頭の「経済部門間の有機的連携と協同をいかに強化していくのか」と題する内閣局長の投稿文は、「これまで経済部門間の有機的連携と協同が円満に保障されなかった」とし、その例として「昨年、金属工業と石炭工業部門の間、石炭鉱業と鉄道運輸部門の間の協同実態だけ見ても、正すべき問題が少なくない」ことを指摘した上で、「(そのような状況を生じさせた)責任は、我々内閣勤務員にある」と自己批判し、今後は、「人民経済部門と単位の間に存在する本位主義を徹底して打破し、目的意識的に積極的に協同し、互いに支持補充するよう経済作戦と指導を迫力を持って行っていく」との決意を述べている。

 さらに、具体的な問題点として、①「新たな経済措置を取るにあたり経済実践と人民生活に及ぼす影響を正確に考慮できない現象」、②「経済事業を計画し作戦するにあたり経済法則と原理を無視する現象」、③「カギとなる点に力量を集中させず、あちこちに分散させる現象」、④「現実態に対する科学的な分析に基づかず、経済事業を主観的に組織(計画)し、社会に労働の浪費と混乱をもたらす現象」を挙げ、それらを「徹底して警戒し克服していく」と述べている。

 以上の記述のうち、「金属工業と石炭工業部門の間、石炭鉱業と鉄道運輸部門の間の協同実態」というのは、要するに、製鉄部門に燃料として必要な石炭を十分供給できず生産に支障をきたし、また、産出した石炭を迅速に輸送できなかったという意味であろう。北朝鮮経済における問題点としてかねて指摘されていたとおりのことが実際に起きていることが改めて示されたことになる。

 また、具体的な問題点として指摘された現象については、自己批判を強調するためにやや誇大に表現されている可能性もあるが、程度の差はあれ、経済管理部門に存在する官僚主義的弊害の類型を示すものとして興味深い。

 これに続く投稿文は、最優先とされる金属、化学工業部門を代表する形で、金策製鉄連合企業支配人が「既存の観念では新しいものは創造することができない」と題して「経験主義と保身主義、技術神秘主義をはじめとしたあらゆる古い思想観点と執務姿勢から脱皮して・・新たな革新を創造する闘争」に邁進していることなどを、南興青年化学連合企業所技師長が「技術力量強化が第一」と題して「技術技能水準を高めることから新たな革新をもたらす目標を立てて」いることなどを述べている。

 このほか、順川地区青年炭鉱連合企業所支配人、大安重機械連合企業所職場長、川内里(音訳)セメント工場班長、熙川製糸工場労働者の投稿文が掲載されている。このあたりは、各層からの声を集めたともいえるが、優先順位と地位が比例しているようにも思える。

 いずれにせよ、これら一連の投稿文は、従前の執務姿勢、生産工程、作業方法などを一新させるとの決意なり実践状況を強調するものであり、冒頭の表題が示す通り経済部門全体に「革新」をもたらしたいとの指導部の意向を反映したものといえよう