rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年3月8日 評論「経営戦略、企業戦略を現実性を持って立てる上での重要な問題」

 

 標記評論は、「斬新な経済組織と指揮で自己部門、自己単位事業において革命的な改善をもたらそう」との共通題目の下で掲載されたもので、「経営戦略、企業戦略を現実性を持って立てる」ための課題として、次の3点を掲げる。

 第1は、「(自部門・単位に内在する)すべての予備と潜在力を最大限動員し効果的に利用することができるように」することである。様々な困難、不足などに直面する各部門・単位の成果は、それらを口実にして生産を遅滞させることなく、「(これまで)すでに蓄積された発展動力をいかに効果的に利用するかということにかかっている」と主張する。

 第2は、「少ない投資で最大限の実利を得られるように」することである。「与えられた環境と条件において資源を最も効果的に利用できる方法が何かを科学的に打算」しなければならないと主張している。その狙いは、要するに「原価を下げつつ、生産増加を成し遂げる」ことである。

 第3は、「(自部門・単位内における)科学技術力量を強化し、その役割を絶え間なく高めることができるように」することである。すなわち、「人材を探し出し、育てるための正しい戦略を立て、実質的に執行する」ことである。

 評論は、こうした「経営戦略、企業戦略」の策定によって「生産と経営活動を主動的に創発的に進める」ことになるとしている。

 以上のような評論の内容は、北朝鮮における「経営戦略、企業戦略」の実態的意味があくまでも上部から指令された製品の生産を所与のものとしつつ、その確実・効果的な実現のための「戦略」であることを改めて示すものといえる。以前の本ブログでも指摘したところであるが、それは、何をどれだけ生産するかから始まる資本主義社会の「経営戦略」とは似て非なる概念であることを承知しておく必要があろう。

 なお、前述第2の「原価縮減」を敷衍するものとして、上記共通題目の下に掲載された「「生産総括項目に何を追加して含ませたのか」と題する記事を簡単に紹介したい。同記事は、价川炭鉱において、「(採炭に費消する)資材消費状況が石炭生産量に劣らず重要な問題として共に総括されている」ことを紹介し、これを称賛している。資本主義国では余りにも当然のことがこうして称賛されるのが北朝鮮の経済管理の現状なのであろう。そういった状況を前提にするなら、前述のような意味での「経営戦略」の必要性の強調も、また意味のないことではないと考えられる。