rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月4日 論説「社会主義威力は、すなわち集団主義威力である」

 

 本論説は、「社会主義は、団結した人民大衆の無窮無尽の力に基づき前進する社会である。集団主義の原則を確固として固守し、徹底して具現していくところに社会主義の勝利的前進がある」として、「集団主義」を称揚するもの。

 では、そこで言う集団主義とは何か、直接の説明はないが、「我々の言う集団とは単純な個別的成員の結合体ではなく、すべての人民が首領の下に一つの思想と志、意志で結合された社会政治的生命体を意味する」「社会政治的集団に忠実であるということは、首領に忠実であるということを意味し、首領に対する忠実性は、集団主義の最高表現になる」としていることからすると、要するに「首領に対する忠実性」を核とした団結心を意味する概念と考えられる。

 ただ、それを主張する今日的意義は、主に経済面にあると思われる。すなわち、「社会主義経済は、すべての部門、すべての単位が有機的に連結された集団経済である」ことを強調した上で、その運営において「最大に警戒すべきことは単位特殊化と本位主義である」とし、「すべての部門、すべての単位において自分の利益だけを追求する狭小な観点を大胆に打破し、国家と革命の利益をまず考え実践していく気風を徹底して確立」することを訴えている。結局、「単位特殊化と本位主義」批判のための「集団主義」強調というのが本当の狙いなのではないだろうか。

 また、社会生活の面に関しては、「集団主義は、人間に対する愛に基づいている」とした上で、「すべての人民が互いに助け導きつつ、志と心を一つに合わせ、全社会が徳と情で和睦した大家庭を為す」ことを求めている。

 多くの凡人には期待しがたいこうした理想的行動を「首領に対する忠実性」を原動力とすることによって実践させようというのが、ここで言う「集団主義」ということの本義なのかもしれない。

 ちなみに、同論説では、それをいかに浸透させるかの方法論への言及はないが、それに続けて掲載されている評論「人民大衆第一主義政治の地位」は、「我が党の人民大衆第一主義政治は、社会成員を愛と情でよりしっかりと結び付け、団結した人民の力を非常に増大させていく革命的な政治方式である」と主張している。これは、「人民大衆第一主義」の実践によって、「集団主義」が定着するとの考え方を示したものといえよう。

  なお、同評論は、「我が党の人民大衆第一主義政治」について、「社会主義基本政治方 式」であり、「自主政治、民主主義政治、仁徳政治を具現することについての社会主義社会の本質的要求を最上の高みで具現している政治方式である」と主張する。「人民大衆第一主義」についてのこうした定式化は(管見の限りでは)これまでに例がなく注目に値する。とりわけ「民主主義」に殊更言及しているのは、最近のバイデン政権の「人権問題」批判なども視野に入れているようにも思えるが考えすぎであろうか。