rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年5月18日 論説「今日の現実は積極的な実践家、創造型の実力家を要求する」

 

 標記論説は、今日求められる「積極的な実践家、創造型の実力家」の要件として、次の3点を掲げる。

 第一は、「いったん始めたことは、最後まで推し進めていく」ことである。ここでは、「実力が党政策貫徹の威力ある武器であるとするなら、実践力は妨げるあい路と難関を果敢に打開していけるようにする確固たる担保である」として、「実力」と「実践力」を共に発揮して課題貫徹に邁進することを訴えている。

 第二は、「革命任務を最短期間内に最も完璧に遂行していく」ことである。ここでは、「党が定めた時間(期間)に、党が望む高さで、これが実践家、実力家の姿勢であり立場である」とされる。

 第三は、「不断に新しいものを志向し、継続革新、継続前進していく」ことである。ここでは、「共産主義建設の遠大な目標、偉大な理想を実現する上で我が党が第一に信じるのは、革命熱、愛国熱、闘争熱で心臓の血を沸かす偉大なわが人民の精神力と創造力である」ことが主張されている。前掲「不断に・・・」の意味は、そのような文脈で解釈する必要があると思われる。

 結局のところ、本論説が訴えるのは、党(=金正恩)の定めた課題、目標の実践貫徹に力を尽くすことといえる。標題からは「人材育成」の必要性を訴えたもののようにも見えるが、ここで求められるのは、あくまでも忠誠心を基盤とした「実力」である。第三に関しても、例えば、従前であれば掲げられたであろう「世界に目を向けて」云々といった事柄には言及がない。

 以上のような論説の傾向と符合するものとして、実は、昨日の「労働新聞」に掲載の評論「社会主義教育の本態を固守し輝かせることは教育部門に提起された最も重要な課題」(副題「党第8回大会で提示された課題を徹底して貫徹しよう」)がある。

 同評論は、「我が国社会主義教育の優越性は、すべての青少年学生を革命的世界観を帯びた高尚な精神道徳的風貌を所有する立派な革命人材として育つように教育教養するところにある」と主張する。

 更に注目されるのは、「政治思想教育を先行させつつ、科学技術教育を決定的に強化することは我が党の一貫した方針である」とした上で、重点を前者に置き、「政治思想教育を確固として先行させてこそ、彼ら(青年学生)を国に忠実で組織と集団を貴重に見なし労働を愛する真の働き手、知識と才能、創造的能力で祖国を支えることのできる真の人材として育てることができる」と主張していることである。

 また、教科編成などに関しても、「教育内容構成において政治思想教育を先行させ、教科別、年齢心理的特性に即して政治思想の方法を探求し、適用していくことが重要である」としている。

 更に教員に対しても、「党においては、教員が教育者になる前に真の革命家、熱烈な愛国者になることを望んでいる」として、「教員は、党を真心で奉じ、党と運命を共にし、白玉のような良心を帯びて党の教育政策を忠実に奉じていく真の忠臣にならなければならない」と主張して、党に対する忠誠心の確立を訴えている。

 このような主張は、前掲「政治思想教育を先行させつつ、科学技術教育を決定的に強化する」とのスローガンの下、科学技術教育の強化に重点を置いていた従前の論調(金正恩執権直後の2012年、学校教育年限を1年延長して以来のもといえよう)とは極めて対照的なものといえる。

 前掲の二つの論評は、先般来の「非社会主義的現象・反社会主義現象」根絶を重視する流れの中で、教育分野をはじめ社会全般において、「人材」観に変化が生じていることをうかがわせるものと考えられる。