rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年8月5日 北朝鮮経済統計(韓国銀行推計)

 

 去る7月30日、韓国銀行が2020年の北朝鮮経済に関するいくつかの推計を発表したので、遅ればせながら、それを簡単に紹介しておきたい。

 まず、年間の経済成長率については、2019年対比で4.5%の減少であったという。ちなみに、2010年以降の対前年比成長率については、10年:-0.5%、11年:0.8%、12年:1.3%、13年:1.1%、14年:1.0%、15年:-1.1%、16年:3.9%、17年:-3.5%、18年:-4.1%、19年:0.4%としている。

 推計の精度を考えると、小数点以下の細かい変化にどの程度の実質的意味があるのかやや疑問もあるが、大きな傾向として、2012年の金正恩執権以降、概ね微増を続け16年(第7党大会の年)にはそれが顕著化したが、その後、17年以降は、概ね不振続きという傾向を読み取ることができ、昨年もその流れの延長にあったといえよう。

 また、単純に成長率を加算すると、12年から16年までで6.2%成長し、17年から20年までで11.7%減少したことになり、通算すると、金正恩時代9年間の成長率は、-5.5%ということになる。これが北朝鮮市民の生活の実情をどの程度反映しているのか関心がもたれるところだが、このところはコロナ防疫のため訪朝者もほとんどおらず、直接の見聞談を聞くことができないのが残念である。

 次に、2020年の国内総生産に占める各分野の構成比については、農林漁業:22.4%、鉱工業28.1%(鉱業:10.8%、製造業17.3%)、電気・ガス:5.6%、建設:10.0%、サービス33.8%(政府:26.5%、その他:7.3%)、となっている。また、各分野の対前年度増減率については、サービスの「その他」(大半は金融保険・不動産)が-18%と最大の下げを示し、これに鉱業(-9.6%)、農林漁業(-7.6%)、製造業(-3.8%)が続く形となっている。

 最後に国民所得の韓国との対比については、北朝鮮の名目GNIは、35兆ウォン(韓国のウォン)であり、韓国の55.7分の1(約1.8%)、人口一人当たりのGNIは、139.7万ウォンで、韓国の27.3分の1(約3.7%)としている。

 改めて、経済力で50倍以上の規模を持つ韓国と政治的には互角あるいはそれ以上の関係を維持している北朝鮮の「頑張り」に驚かざるを得ない。ただ、韓国側は、そうした絶対的な底力の格差を認識しているが故に「強者の寛容」として、敢えて北朝鮮に過大な譲歩(のふり)をしているのかもしれないとも感じる。

 いずれにせよ、北朝鮮経済は、長期的にも短期的にもますます不振が深刻化していると考えられる。ただし、それが先般の通信線復元の直接的理由なのかといえば、それはまた別の問題と考えておいた方が間違いないように思われる。連絡事務所爆破もまた、そのような経済不振の背景の下で行われたのであるから。