rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年11月19日 第5回3大革命先駆者大会が開幕

 

 本日の「労働新聞」は、標記大会が18日に開幕したことを報じる記事及び金正恩が同大会参加者に送った書簡「3大革命の火の手を強く燃え上がらせ社会主義の全面的発展を成し遂げよう」の全文を掲載した。

 まず、開催状況を簡単に紹介すると、参加者は、全国の3大革命旗手(3大革命赤旗獲得運動で貢献した者)、3大革命小組員に加え、道・市・郡党責任幹部、省・中央機関党責任幹部、武力機関政治幹部、党中央委該当部署幹部と関係幹部とされる。名前を挙げられた幹部は、党常務委員では、崔竜海、金徳訓、朴正天、政治局メンバーでは、李日換、呉守容、太衡哲(以上党秘書)、金在龍、呉日正、許哲万、劉進(以上党部長)、金永換(平壌市党責任秘書)権英進軍総政治局長であった。

 進行は、まず開会辞に続いて国家吹奏があり、その後、崔竜海金正恩書簡を伝達した。次に、李日換秘書が「大会報告」を行い、3大革命赤旗獲得運動及び三大革命小組運動に関し、冒頭、金日成金正日から金正恩に至る3代指導者の指導を称賛した上で、前回大会以降の成果と陥及びその原因をそれぞれ指摘するとともに、今後の推進方針、それに対する党的指導、行政的・技術的指導の決定的改善の必要性などを訴えた。

 更に、「討論」が行われたとされるが、討論者、内容には言及がない。大会は継続するとされているので、2日目以降の討論と合わせて紹介されるのかもしれない。

 金正恩書簡は、1万字を超える長大なものである。まず、今次大会の趣旨について、「3大革命路線の戦略的地位と変革的意義を再認識、再確認させ、全国に3大革命の火の手を強く燃えあがらせるため」に招集したとしている。

確かに、従前の「3大革命赤旗獲得運動先駆者大会」は、概ね9~10年ごとに開催されてきたが、今次大会は、「3大革命小組運動」も包括する意味で「3大革命先駆者」として、前回大会から6年で招集された。これは、単に従前の延長線上での運動の継続ではなく、新たな位置づけ、推進を目指したものであることの表れであろう。

 書簡は、その上で、改めて、「3大革命路線」について、「我が党の総路線」であることを繰り返し強調するとともに、「(そこに)貫通している精神は自分の力で自国の革命を完遂する徹底した自主精神」と主張する。そして、「我々は、今後、100年でも200年でも3大革命路線を純潔に継承し完璧に具現していかなければならない」と訴え、それによって「近い将来に自立、自存で繫栄する社会主義強国を打ちたてる」ことを挙げる。「社会主義強国は遠い将来の理想ではなく、現実的な目標となっている」のであり、「社会主義強国への偉大な転換は、すなわちすべての社会成員の革命化、技術経済力の高度化、社会全般の文明化過程」であると主張する。要するに、思想革命、技術革命、文化革命の3大革命推進が社会主義強国実現の方途であるということであろう。

 そうした趣旨の下、「3大革命を動力として国家社会生活のすべての分野、国のすべての地域の同時的で均衡的な発展を強力に推動しようというのが今次大会の基本精神」であるとして、「すべての革命陣地を3大革命化しよう!」とのスローガンを提起する。

 そして、そのために「3大革命赤旗獲得運動」を「革命発展の要求に即して拡大強化」すること、すなわち、「今のように機関、企業所、工場、協同農場、職場と作業班だけを単位として展開するのではなく、市・郡・連合企業所を包括したより広い範囲に拡大し、名実ともに全社会的運動、全人民的運動として展開」するとの「方針」を提示した。

 更に、「党政策貫徹と3大革命は、別個の問題ではありません」として、「3大革命赤旗獲得運動を市・郡強化の威力ある武器として堅持し、すべての事業をここに志向させ」ること、すなわち、様々な政策的課題への取り組みを3大革命推進という文脈の下で総合的に進めることを求めている。

 また、その推進に向けての方法論的課題として、「大衆の自発的で積極的な闘争」とすること、「道党委員会がかじ取りをしっかり行う」こと(そのため各道で「3大革命展示館」を設置運営)、「幹部の見解と観点から革新」すること、「すべての単位を(例外なく)この運動に決起させること」、「正しい賞罰制度を実施すること」、雑誌『3大革命赤旗』の活用、「社会主義愛国功労者に学ぶ運動」との連携強化などをあげている。なお、「賞罰」に関しては、「3大革命赤旗を獲得した市・郡には、勲章と表彰を授与するだけでなく国家的な優待措置を実施」すること、逆に同運動で下位を占めた市・郡の責任秘書らに対しては「応分の責任」を問うとしている点が注目される。

 次に、「3大革命小組運動」に関しては、まず「3大革命小組の任務は技術革命を基本として派遣単位の3大革命を推進すること」と説明した上で、小組員に対し、「党的、国家的眼目で革新的な考察力で現実を透視し、派遣単位の3大革命遂行に助けとなる斬新で建設的な意見を積極的に提起」するとともに、派遣期間の経験を通じて「自らを将来の民族幹部として準備する」ことを訴え、強い期待感を示している。

 ただし、同運動に対する指導に関しては、「最近に至って3大革命小組に対する指導は、一言で言って内実がなく形態的な外見だけがあるといえる」と厳しく批判し、その結果、同運動が「活気を失っている」として、その活性化を強く求めている。

 そして、そのために「小組の質的、量的強化から始める」べきとして、小組員の選抜・配置の適正化をあげるとともに、「生産単位にだけ派遣していた従来の枠から抜け出て、地域単位へも派遣し、党の市、郡強化路線貫徹に一役果たすように」すること、同運動に対する党組織と幹部及び国家科学技術委員会による指導の充実などを訴えている。

 ここで3大革命小組の市・郡への派遣方針は、3大革命赤旗獲得運動の市・郡への適用と符合するもので、市・郡を社会建設の拠点としようとの金正恩のかねての構想を反映したものといえよう。

 以上のような書簡の内容は、その表現を見ると、非常に重大な戦略方針の提起を意味するもののようにも思えるが、そうであれば、「書簡」という形で済ませるのではなく、金正恩本人が直接出席して訴えるべきではなかったかという印象をぬぐえない。したがって、今後、ここで示されたような「3大革命路線」がどの程度定着し、また、普遍性を持って展開されていくのかは、注視が必要と思われる。

 ただ、いずれにせよ、市・郡(及びその責任幹部)に対して、「3大革命赤旗獲得運動」の適用などにより、従前以上に厳しく諸課題の実践ぶりが問われることになることは間違いないであろう。地方幹部のため息が聞こえそうな気がする。