rodongshinmunwatchingのブログ

主に朝鮮労働党機関紙『労働新聞』を通じて北朝鮮の現状分析を試みています

2021年12月8日 金正恩が軍事教育幹部大会参加者と記念写真を撮影

 

 本日の「労働新聞」は、金正恩が12月7日、先に開催された朝鮮人民軍第8回軍事教育幹部大会の参加者らと記念写真を撮影したことを報じるとともに、記念写真5葉を掲載した。

 これには、朴正天党秘書、呉日正党(軍政指導)部長及び「国防省指揮官たち」が参加したと報じられている。大会主席檀への着席者についても、この両名に続いて「国防省指揮官たち」が報じられており、また、大会の「報告」を李永吉国防相が行ったとされていることなどを勘案すると、「軍事教育」は、国防省が主に所管する業務とされていることがうかがえる。

 記事によると、金正恩は、記念写真撮影の席で、軍事教育幹部に対し、「聖なる革命陣地を守っていく革命家中の革命家にならなければならないと改めて強調」するとともに、「教育事業において実質的な成果、実質的な変化を成し遂げることによって、主体的革命武力建設に真に貢献するであろうとの確信を表明」したという。

 聯合通信などでは、同大会の開催趣旨について、経済困難が続く中での軍紀引き締めを企図したものとの見方を示しているが、それは、北朝鮮の現状について、経済の悪化がますます深刻化しており、その影響で軍人の規律弛緩も進んでいるであろうとの先入観に基づくものと思われる。今次大会(上記記念撮影も含め)に関する報道を見る限り、軍紀確立を示唆するような表現(例えば、軍人の道徳性強化とか軍民一致精神の発揚など)はほとんどみられない。そこで繰り返されているテーマは、昨日の本ブログでも紹介したとおり、「党(中央)に対する忠誠」であり、「軍事教育における変化」である。聯合通信の解説は、北朝鮮の現状について、「経済制裁とコロナ渦での経済困難」という固定的な枠組みにとらわれて、金正恩に対する新たな権威付けの動きというより重要な流れを見落としているのではないだろうか。

 なお、その点に関し、12月5日の本ブログで改築された工場建物への「全党と全社会を金正恩同志の革命思想で一色化しよう!」とのスローガン設置事例を場開したが、7日20時の朝鮮中央放送のニュース番組で写された平安北道美術創作社の新社屋の正面上部にも同じスローガンの大型看板が設置されていた。この表現の普及・定着を示すものといえよう。

 そもそも、現在の北朝鮮の経済困難が軍の規律に影響を及ぼすほど深刻な水準に至っているのか大いに疑問である。今日の「わが民族同士」のホームページに掲載されていた朝鮮中央放送の「良い食事習慣を身につけさせよう」という5分ほどの教養番組は、子供に良い食事習慣を身につけさせるための留意事項を解説するものであったが、それは、「(見本となる)親が食べ物の好き嫌いをしない」とか、「間食(おやつ)を賞(ご褒美)として与えない」、「テレビを見ながら(菓子類などを)食べさせない」といった事柄であった。このような内容の番組(対外宣伝用ではなく一般国民向けのものであろう)は、仮に国民が食糧不足に苦しんでいるとすれば、到底ありえないものである。